2日目の夜も、野郎ども3人と酒盛りだ。
漁師のエディが捕ってきた魚を、
コックのキンジョーが料理する約束だった。
日も暮れかけた頃、
昼間の仕事を終えた野郎どもが
約束通り集まってきた。
エディ「魚、持ってきたぞ!」
「おぉ~、こんなの捕れるのか!?」
エディ「この魚は、美味いんだぜ」
キンジョー「よっしゃ、料理は任せとけよ」
サモア「おれの特製ソースも持ってきてやったぜこれかけたら、たまんねーぞ」
相変わらずいいコンビだ。
名前は解らないが、
2Kgはありそうなメインの魚を焼き、
エビと小魚は炒め物、それに、野菜スープと
手際よく料理が出来上がっていく。
キンジョー「よし、みんな、そろそろ食おうぜ」
台所のテーブルを囲んで
彼女の家族に、野郎ども、
匂いに誘われてきた近所の人
椅子が足りずに立ち食いの人、
お皿にご飯とおかずをのせて
勝手口の外で食ってる人
今日もにぎやかな晩メシだ...
エディ「どーだ?美味いだろ?」
「美味い、美味い」
(これ、ホントに美味かった)
キンジョー「おれの腕だろ!」
キンジョーが自分の太い腕を指さし、
自慢げに笑ってる。
ん?彼女がなにやら、
野郎どもと話して爆笑してる。
「なに?何で笑ってるの?」
「あのね、本当はエディが捕ってきたのは、エビと小っちゃい魚だけなんだってw」
「大きい魚は、漁師仲間から買ってきたんだってさww」
「だから、エディは漁師に向いてないって、みんなで、からかってたんだよwww」
「そうなの?」
エディ「細かいことは気にするな!」
フィリピンにも、サザエさんみたいな
オチってあるのね。あはは...
サモア「今日は飲みに行こうぜ~これもんの、これもんだぞ!」
そう言いながら、身振り手振りで
おぱーいと、腰のくびれを見せた。
「おっ?そっち系?」
どこに行っても、オトコはみんな同じだ。
そして、
こういう時の男同士の結束力は強い。
「なに?でかけるのか?」
サモア「あぁ、チョットこの辺、案内してやろうかと思ってよ」
「なに、男だけで話して」
「あ~、わかった。スケベの店でしょ!」
こういう時のオンナの勘も驚くほど当たる...
「わたしも行く!」
父「なんだか楽しそうだな!」
母ちゃん「もーお父さん!いい歳して!」
結局、仲良し3人組、
彼女の父ちゃん、彼女、自分
計6人でトライシクル3台に分乗して
行くことになった。
目的の店は、少し走って広い道に出ると
すぐに現れた。
うわぁ~、ディープだ...
明かりは店の看板のネオンと
遠くに水銀灯がひとつだけ。
店の客が乗ってきただろうバイクが
アリのように並んでいる。
店の前にはドラム缶をテーブル代わりにして
店に入らない人達が立ち飲みしている。
簡単に言えば、地元の溜まり場。
日本人どころか、外国人すら居ない
完全にアウェーだ...
真っ黒なドアを開けてエディが突入し
キンジョーとサモアに
脇を固められながら店に入った。
中は意外に広くて、店の一番奥がステージ、
ステージに向かって10人がけぐらいの
ソファーが4×5列ぐらい並んでいる。
自分達は前から2列目の真ん中の
ソファーに腰掛けた。
なんとなく予想はしていたが、案の定
俺の両隣りには彼女と父...
ステージ上では、トップレスの
オネーチャンが踊ってる。
店内には、自分1人だけ色白な日本人。
トップレスのオネーチャンの目に
止まったのかこっちに降りて来る。
いや、あの、
そんなに、おぱーいをアピールされても、
素直に喜べない状況なんですってば...
「チップ、パンティにはさんであげたら?」
「ヒエェェェェ、おこってるの?」
「おこってないよ、やきもちだけ!もー、ムカつく!」
「それは、やきもちじゃなくて、怒ってるって言うんだよ~」
「うるっさい!」
楽しんだのは仲良し3人組だけw
でも、6人で2時間近く飲んで7000ペソ。
(当時のレートで15,000円ぐらい)
安いなぁ~
午前0時を過ぎても店の外は人で
ごった返していた。
「マイボディガード!」
サモア「おぅ、大丈夫か?」
「おぉ~頼もしい。」
ドラえもんの、
のび太君の気持ちがよく解ったw
店の前に止まっていた
客待ちのタクシーを捕まえて
今日はここでお開き。
「今日も楽しかったよ!」
キンジョー「なんだ、もう帰っちゃうの?」
「またな~」
「じゃ、あたしもこっちね」
父「ん、また明日な」
「お父さ~~~~~ん」
寛大なお父さんだ...
ホテルの部屋に戻るころには
もう我慢の限界だ...
うぉぉぉぉ、まずは
「ちと、便所!」
「うぁ、あたしも!」
「おれが先!」
「もれる!」
「お前どっち?」
「おしっこ」
「おれ、うんこwはい!お前バスタブ決定!」
フィリピンのトイレは便座&紙がない。
でも、
ホテルのトイレには便座も紙もついてる。
トイレはできるときに
やっておいたほうがいい。
「見るなよ!」
「うるさい!」
「くさいぞ!」
「うるさい!」
翌朝目が覚めると、彼女はすでに出かける
準備を済ませていた。
「今日は、行きたいところあるの」
「どこ?」
「乗り遅れた飛行機のチケット返したらお金戻ってこないか聞いてみる。」
こういう所は、しっかりしてる。
解らないけど、行くだけ行って見よう。
昨日行ったNCCCモールより少し小さい
別のモールに彼女がチケットを買った
旅行会社があった。
「800ペソ戻ってくるって!やった!」
日本円で1600円ぐらい。
それでも、彼女の2日分のバイト代と同じだ。
簡単にマニラまで迎えに来いって言ったけど、
彼女もそれなりに決心して来たんだろうなぁ。
あの時逢えてほんとに良かった...
「せっかくここまで来たから、何か二人の思い出に残るもの買おうよ。何かいいものない?」
「じゃあ、指輪がいいな~。ずっと、つけていられるから」
「安いのにしてねw」
二人お揃いのシルバーの指輪を買った。
自分は今まで指輪なんかしたことない。
だから、一緒にネックレスも買って
指輪をそれに通して着けた。
「あたしも、それにしたい」
「はいはい」
もう、晩メシのおかずを買って
彼女の家で食べることが、
決まり事になっていた。
3日目の夜も彼女の家に行く。
昨日までの2日間、
あまり絡まなかった彼女のお母さんが、
今日はやけに話しかけてくる。
彼女のお母さんは、
タガログ語しか話さないから
何を言っているのかさっぱり解らない...
すると、突然涙ぐんで何か言っている。
「ねぇ、お母さんなんて言ってるの?」
「え~とね」
母ちゃん「二人おそろいの指輪買ったんだね。」
母ちゃん「そういうことなのね!」
母ちゃん「お母さん安心したわ。」
母ちゃん「娘をよろしく頼むわね!」
「だって♪」
「えぇぇぇぇぇ!」
「結婚は勢いでするもんだよ」って、
よく聞いていたけど
勢いって、多分こういうことなの?
「そうなのおぉぉぉぉぉ!?」


