双子の姉なっちゃんの話②【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
今日からまぁちゃんと、またふたりで暮らす生活がはじまるんだ。
その日は恵比寿駅でまぁちゃんは私が来るのをまだかまだかと待っていた。
人ごみの中で改札を出る私を小さいまぁちゃんが私を見つけて駆け寄って来た。
私たちは、久しぶりの再会と新しくはじまった今日を小さい二人で抱き合って喜んだ。
久しぶりに会ったけど、私たちの間にある空気は何にも変わっていなかった。
まぁちゃんの住むアパートは、恵比寿駅の東口から出て少し坂を降りた場所にあった。
駅から徒歩5分の好立地だ。
だけど、恵比寿といって華やかなマンションを想像するが、
貧乏学生だったまぁちゃんが住んでいたのは、6畳1Rの小さなボロアパートだった。
小さなユニットバスのお風呂に、小さな部屋と部屋と似合わず大きなキッチン。
部屋にはミシンやマネキンが置いてあったのでもっと小さく感じた。
ボロくて小さい。そんなアパートが今の私たちにはぴったりの部屋だった。
私が来たその日は、まぁちゃんが「引っ越しそば」を買って来てくれて二人でおそばを作って食べた。
おそばを作って食べた後は、近所の公園に星を見に行った。
東京はあまり星が見えなかった。
だけど私たちは最高に幸せだった。
これから、どんな楽しいことが待っているのか。
どこに行こうか、どうやって遊ぼうか。
ふたりで、今一緒に入れる感動と、
この先のワクワクする日々のことをたくさんたくさん話した。
私には、ここまで来たことが奇跡みたいだった。
あの時、福岡の会社で足りない何かを夢中で探していたとき、
またふたりで住めるなんて思わなかった。
満点の星空でワクワクを思い出したあの日、
私たちはまた二人でワクワクしながら生きることを選び直したんだ。
私の仕事がはじまってからも、
私たちの日々はどこか非日常で夢の中にいるようだった。
私の仕事の帰りはいつも遅かった。
夜の10時や11時に帰れて今日は早いな〜という位だった。
10時や11時に帰る時は、
いつもまぁちゃんが恵比寿駅の近くにあるベンチにちょこんと座って待ってくれていた。
そして、行きつけの「タコBAR」に二人で大声で歌を歌いながら歩いていった。
タコBARとは、家の近所にあるタコの遊具がある公園のことだ。
それを私たちは「タコBAR」と呼んでいた。
ここが私たちが決まって飲みに行く、秘密基地のような行きつけBARとなっていた。
ただの公園だけど私たちにとって秘密のBAR。
私たちはいつもここで、少しのお酒とお菓子を買って、
今日あったこと、思いついた夢や、おもしろいこと、何でも話した。
iphoneで音楽をかけながら、星空を見ながら飽きるまで話をした。
仕事をしていても、毎日が非日常みたいだった。
二人でいればあの大好きなワクワクした感覚を忘れずにいた。
最初は噛み合ず、すれ違ったり、ケンカをする日もあったけど、
毎晩、冗談みたいに狭いユニットバスのお風呂に一緒に入って、
夜寝るときは一つだけあるお布団を敷いて二人でくっついて寝て、
納得いくまでいつも話し合った。
タコBARで散々話したのに、
お布団の中でも話が止まらなくなって気づいたら朝だったことが何度もあった。
気づいたら大人になってもワクワクして生きる日々が続いていた。
それから、1年後。
私は大きなターニングポイントを迎えることになる。
それは、この時の私が想像もしなかった、今の大好きな人生へと続いていた。
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*この話の前編はこちら→【なっちゃんの話①】
*本編の最新話はこちら→★
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