第9話 コップの水はどれくらい入っている?【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】

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だけど、胸中が、あつかった。

これはなにかとても、重要な事だ。こころは分かっていた。






作家さん
もうひとつ、質問していいかな?






作家さん
まほちゃんは、



作家さん
...自分のことが好きかい?





ふいに聞かれた質問。


一瞬空気が止まったように感じた。




すぐに返事をしようとした。

でも、喉まで出て、つっかえて、そしてなにも声が出なかった。





だけど、その代わり、涙が、大粒のなみだがぼろぼろとこぼれていた。

私は、気づいたら肩を揺らして号泣していた。

泣くなんて、思ってもいなかった。でもとまらなかった。




とっさのウソもごまかしも、できなかった。




...ううん。私は、好きじゃない...。




声をつまらせながら、うつむいたまま首を横にふる。





私は自分のことが、好きじゃなかったんだ。

  私は、私が、大きらいだった。





なみだは止まらなかった。胸がキリキリと痛かった。




作家さんは、優しく静かに見守ってくれていた。

そしてまたコップを指差して言った。





作家さん
もしまほちゃんがもう自分は100%なんだ、
満タンなんだって認めた時、
コップから水があふれるんだ。

そしてあふれた水を、
周りの人にあげれるようになるんだよ。







そして、問題だらけで絡まっている私の、たった1つの解決策を教えてくれたんだ。





作家さん
もう、自分を愛して生きる許可をしてみないかい?

そしたら、問題は、全部解決するよ。




彼が教えてくれたその解決策は、

私の人生の中で一度もやったことがないことだった。





自分を愛して生きる許可





それから3日間、私は家のバスタブにいた。

そしてほとんど家からも出ず、泣き続けた。




なんでバスタブかというと、

小さいころお風呂の中が私の反省場所だったからだ。




泣きながら出てくるのは、

あたまの隅のほうに押し込めて、もうすっかり忘れていた小さいころの記憶たちだった。





そうだ私は指に絆創膏を貼っていた。

お母さんにまた叱られたとき、また失敗をしてしまうとき、

この絆創膏を見たら、もう「悪いこと」も「失敗」もしないんだ!

という、自分で考えたおまじないだった。


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