自分探しの旅に出た大学生が見つけた、ただ一つの真実 ~第5話 富士の樹海と宿無しの恐怖~
4日目 一時の休息。
「ピピピピ」
携帯のアラームと共に暖かい布団の中で、岩間は目が覚めた。
疲れていたのかぐっすりと眠り、だいぶ体力が回復した。
こんなにも布団が幸せに感じるとは思っていなかった。
宿の朝食を食べ、しっかり準備運動をして再び自転車で出発。
今日はこの旅、初めての休息。
河口湖観光の日。
天気は残念ながら曇りだったが、過ごしやすい日だった。
河口湖の観光スポットを巡って、ゆっくりと過ごした。
観光スポットを巡っていると、家族やカップル、友人同士が楽しく観光しているのを見ながら、
自転車で通り過ぎる。
その時、岩間は確信した。
「観光地は、一人で来るものではない。というより来てはいけない。」
と。
この確信を得て、岩間はすぐに観光地を去った。
富士の樹海の恐怖
観光地から離れて、山道にも面白そうなのがありそうだと思い、一般道路を走っていると、
道路脇に地面にいくつもの穴が開いている「ガス穴」というものを発見。
興味本位で、自転車から降りて、ガス穴を見に森の中に入っていった。
これが恐怖の始まりだった。
何の躊躇もなく、
「まぁ矢印通りに進めば大丈夫でしょ。」
と矢印通りに進む。
進んでいくと、奥の方にガス穴を発見。
深いガス穴ですごいなぁと感心して、
「よし、戻ろう」
と、後ろを振り返った瞬間。
「・・・。あれ・・・。戻る方向どっちだっけ?」
( ゚Д゚)
なんと見渡す限り、同じ風景なのだ。
目印にしていた矢印も見当たらない。
岩間はここで気づいてしまった。
「そういえばここって、富士の樹海じゃん( ゚Д゚)」
明るいうちから恐怖が襲う。
「・・・戻れない。これは、かなりまずい」
しかも今更だが、岩間は方向音痴だった。
とにかく戻れるように冷静になって、集中した。
全ての感覚を外に向けて、何か手掛かりがないかと探した。
微かに車の音が聞こえた。
「この音が聞こえているうちは、まだ最悪大丈夫だ。」
いざとなったら、道とか関係なく、車の音の方へ走れば助かると
リスクヘッジの手段を確保した。
地面に微かな足跡があることを発見。
それを頼りに恐る恐る進む。
最悪、道に迷ってもガス穴の場所に戻れるように注意して進んだ。
・・・
感覚を集中させ、冷静に進んだおかげで、
なんとか自転車が置いてあるところまで戻ることができた。
「あぁ、よかった」
安堵感とドキドキが続いていた。
これは、生きる幸せと富士の樹海の恐ろしさを感じた出来事だった。
宿無しの恐怖と人の温かさ
富士の樹海で恐怖を感じているうちに夕方になり、今度は、宿無しの恐怖が襲ってきた。
(そうです。また宿がないのです。)
中心街を探してみるが、いいところがなく、なかなか見つからない。
駅で寝ようかとも思ったが、駅員さんに怒られそうだったので、やめた。
また厚木の時のようにそのまま進むか泊まるか悩んだ。
「よし、今度も進もう」
と思ったが、さすがに富士山の周りは山道しかなく、確実に大変な想いをすると分かったので、
無理をしないようにした。
山道に入りそうなギリギリのラインまでだったら、
走ってみようと進んだら、なんと宿泊付銭湯の看板が!
ちゃんと24時間営業と書いてある!!
「よかった!今日はここにしよう!」
安堵感いっぱいで、宿泊付銭湯へ向かった。
宿泊付銭湯に到着。
「ここに泊まれる」と自転車を降りようとしたその瞬間、
岩間の時間が止まった。
「く、暗い。で、電気がついていない。」
なんとその日は、偶然にも24時間営業をしていない曜日だった。
【神様は、岩間に試練を与えた。】
「この先はもう山道だし、もう泊まるところはここしかない。なんとかならないかな・・・」
と入口で待っていると、奇跡が起こった。
銭湯の電気がついた!
そして、銭湯のおじさんが立っているのを発見!
恐そうなおじさんだったが、そんなのは関係ないと
おじさんのところへ猛ダッシュ&泊めてくれないかと交渉に入る。
恐そうなおじさん「今日は、24時間営業じゃないからなぁ・・・」
岩間「そこをなんとかお願いします!」
恐そうなおじさん「う~ん、そうだな・・・しょうがない!今回は特別だ!」
岩間「ありがとうございます!!!!」
普通にめちゃめちゃいいおじさんだった。
しかも宿泊代も通常よりも安くしてもらい、「朝、銭湯に入っていいよ」とまで言ってくれた。
その時、人を先入観で見てはいけないと反省した。
その後、宿泊部屋に案内してもらい、すぐに布団を広げた。
人の温かさを感じ、感謝しながら岩間は眠りについた。
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