【第八話】『旅人になった日』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
しかし、どんな結果であれ、
結果を知ることが出来たこと以上に最高の結果は無いと思う。
すべては経験。
とりあえず、急な階段を上り切った自分を褒めてあげよう。
そして、その階段を下る。
上りより、下りの方が断然危険なのだ。
旅開始から1時間くらいで死ぬ訳にはいかない。
僕の探している死に場所は、どこか分からないが、
決して此処ではないということだけは分かる。
慎重に下りて、元の道へ戻る。
当たり前のことだが、元の道へ戻ったという事は、
どんなに体力を消耗していても前には進んでいないということだ。
「この疲労の対価があの景色かよ…」
なんてことは思っちゃいけない。
後悔はしないのだ。
思い荷物を担いで、
急な階段を登ってはいけないことが分かっただけで、
良しとしようではないか。
そして僕はまた歩き出す。
一気に緑が増え、神奈川県から山梨県に続く山の峠道に入る。
「あれ?歩道が無い…」
歩道が無い…
地図には「道」がある。
「道」とは元々、人が歩くために造られたものだ。
人が歩けるようになっているのは当たり前。
だと思っていた…。
道には必ず歩道があると思っていた…。
しかし!
僕が買ったのは、ツーリング用の地図だ!
歩き用ではなかった…。
歩道があるのは、市街地や、住宅街といった、人が歩いて行動をする場所で、
そこ以外の場所は、人は歩いて行動などしない。
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