【第10話】『ゴールは決めない』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
フロントのお姉さんからしたら、
単なる営業活動だったのかもしれない。
でも、僕は素直に嬉しかった。
僕が日本海まで行くと言って、
本当に行くと思っていた人は少なかったと思う。
僕自身でさえ、本当に行くとは思っていなかったのだから。
でもお姉さんは、僕が本当に行くと思ってくれた。
だから、パンフレットを渡してくれた。
「この人は日本海まで歩いていく人だ」
「日本海まで歩いて行ける人だ」
と認めてくれた気がして、嬉しかった。
「ありがとうございます!」
そう言ってルートインを出た。
台風は去った。
まだ風は強いが、雲の間から青々とした空が広がっている。
天気までも味方につける男、坂内秀洋!
さぁ、3日目。
始めようじゃないか!
今日のゴールは甲府だ!
広い空の下…
本来のルートをそれてしまったため、
まずは国道20号線に出る必要がある。
Googlemapを活用し、ブドウ畑の道を歩く。
ブドウだ。
食べ物は、スーパーで買うもの。
目の前に食べ物が生っているのは、
万が一何かあっても、生きていける気がして何だか嬉しかった。
クネクネした道を歩く。
いい天気で、周りの景色がとても綺麗に見えた。
僕は写真を撮った。
目で見たものを忘れないために写真を撮りながら歩いた。
しばらくして、大きな橋に辿り着いた。
そこは建物もなく、とても大きな空が広がっていた。
空が広い。
横浜生まれ横浜育ちの僕は、建物があって当たり前の環境で育った。
上を見上げれば、建物も何も視界に入らず、
ただ空だけが広がっている光景は、とても珍しく、感動した。
明らかに知らない景色。
僕は、こんなところまで歩いて来たんだ。
美しい景色は、どんな栄養剤よりも気力体力共に回復させてくれた。
そして、本来のルートに戻った。
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