【第10話】『ゴールは決めない』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
僕は甲府市役所に向かった。
「デカイ!そしてめっちゃ綺麗だ!」
役所というと、ちょっとボロいイメージがあったが、
甲府市役所はリニューアルしたらしく、
めちゃめちゃ綺麗で立派な建物だった。
一階のロビーでは、たくさんの人たちが順番を待っていた。
甲府市役所には、展望ロビーがあるらしい。
僕はエレベーターに乗り、最上階の展望ロビーに行った。
なかなかの景色。
何より人が居ない。
ここで少し休ませてもらおう。
途中で何人か人が来たが、
完全旅人スタイルの人間に気がつくと、
そそくさと去っていった。
「申し訳ないっす…」
と思いながら、置いてあるベンチで休んだ。
さて、この時時刻は16時過ぎ。
外はまだ明るい。
前日の疲れが残っていたため、甲府駅周辺で今日は泊まろうと考えた。
しかし、余力を残していては限界になど辿り着くことは到底出来ない。
暗くなることを考えると、そこまで長い距離は歩けない。
5km先にある宿を楽天トラベルで検索し、
露天風呂&サウナが無料のビジネスホテルを見つけた。
サウナが大好きな僕は、そこまで歩くことに決めた。
そしてまた歩き出した。
音楽を聴きながら、黙々と歩く。
そんな時、何か声が聞こえた。
振り返ると、脚立に乗り、
窓ガラスを拭いているおっちゃんがいた。
おっちゃん:「◯×△…れ!」
僕:「えっ?」
イヤホンを外し、僕は思わず聞き返した。
おっちゃん:「◯×△…れ!」
僕:「えっ?」
今度は早口で聞き取れなかった…。
「頑張れ!」
やっと聞き取れた。
おっちゃんは僕を応援してくれていた。
続けておっちゃんは、
「いくつだ?」
と聞いてきた。
「26です!日本海まで行ってきます!」
と言うと、
「若ぇな!」
「俺なんかこの歳になると行動する気すら起きねぇ!」
「頑張れよ!」
と言った。
「ありがとうございます!頑張ります!」
そう言って別れた。
歩きながら僕は、
「今しか出来ないことをやっているんだな。」
と思った。
おっちゃんは、何度も
「頑張れよ!」
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