【第10話】『ゴールは決めない』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
「この並びの400mくらい先にセブンがあるので。」
と言った。
そのセブンは、足が痛過ぎて、
夜飯抜きを覚悟して立ち寄らなかったセブンだ。
こっちは、足が痛過ぎて一歩歩くだけでしんどいのに、
一万円札が濡れているからという理由で、
400m先にあるコンビニまで行って、金を下ろして出直して来いと言う。
往復で800mだ。
僕は確信した。
この男が嫌いだと。
しかし、これからお世話になる身。
悪い雰囲気にはしたくない。
僕は怒りを抑え、
「お金下ろしてくるので、ここに荷物置かせてもらってもいいですか?」
と聞いた。
「どうぞ。」
明らかに面倒臭そうな
それはまた腹の立つ態度だった。
僕は再確信した。
この男が大嫌いだと。
怒りを抑えながら、
濡れた一万円札をヒラヒラさせ、セブンまで歩いた。
それはまぁ、しんどかった。
ついでなので、食料を買った。
お金を下ろし、ホテルに戻る。
リュックを背負っていないため、背中がめちゃくちゃ寒い。
背中と言うか、外はめちゃくちゃ寒かった。
やっとの思いでホテルに着くと、
ヒラヒラさせた一万円札は完全に乾いていた…。
完全にムダ足だった。
しかし過ぎてしまったことは仕方ない。
足は痛いが、食料も買えたことだし、良しとしよう。
そして、僕は宿泊代を支払った。
フロントの男は、
「やっと来やがったよ。」
と言わんばかりの態度で一万円の価値のある紙を受け取った。
こういう時は、カタチだけでも
「お手数おかけしてすみません。」
くらい言うもんじゃないのか?
僕は、学習した。
この男と関わるのは、人生のムダだと。
いつもの僕なら、こんな従業員のいるホテルは絶対に使わない。
他に泊まるところが決まってないとしても、
「やっぱり結構です。」
と言って、利用しない。
しかし、今回ばかりは、天然温泉&サウナの欲求が勝った。
この足の痛みは、天然温泉じゃないと治せない。
サウナで身体を芯から温めないと治せない。
と思った。
案の定、温泉とサウナは最高だった。
露天風呂も熱めのお湯加減に外の冷たい風が心地よかった。
明日はどんな旅になるだろう?
小さな露天風呂から、優しく光るお月様と、
あまり見えない星を見上げながら思った。
ここから先は、大きな街は無い。
長野県に続く山道へ入る。
Googlemapで調べてみると、
現在地から25km付近は、
著者の坂内 秀洋さんに人生相談を申込む
著者の坂内 秀洋さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます