原因不明の肝疾患で肝移植してから約10年, 闘いは今も続く その⑥ 肝移植 -「さあ、いこか」

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外科へ

ここまでは治療は内科中心だったので、消化器内科病棟での入院でした。

いよいよ準備も整いつつある段階, 11月頭には同じ消化器でも外科病棟に移ることになりました。

同じ敷地内ですが、内科と外科で建物が別で、そこそこ離れた場所にあり、荷物移動も大変です(入院が長くなると、段々と荷物が増えてきます)

なんだか慣れたところから急に知らないところに放り出されたようなものです。また、内科が1部屋4人だったのに対し、外科は(当時としても既に珍しい)1部屋8人という大部屋で、騒々しさもありました。

当然ながら看護師さんらのスタッフも替わり、周りの様子も全然分からないし、しばらくは気疲れもありました。


精神科受診

すこし余談です。

大きな手術前には精神科を受診し、手術に耐え得る精神状態かどうかを確認するそうです。

私のときは、問診や心理テストがありました。

診察時、術前術後で精神的なブレが出ない人はほとんど居ないという話がありました。

また手術後は、せん妄といって、意識混濁や幻覚や錯覚が起こることもあるという説明もありました。ひどい場合は興奮して暴れだすケースもあるそうで、そういう場合は手足を拘束することもあり、その旨の同意書にサインしてくれ, という話も出ました。


心理テストは、お題に沿って絵を描いたり、設問に1~5のランクがあって○を付けていくといった、よくあるような内容です。診察室内にカメラもあったので、はっきり聞きはしませんでしたが、テスト中の様子もモニタリンクされていたようです。

この心理テストの結果は、手術後に聞くことになります。余りにも問題があれば、手術前にカウンセリングなど何らかのフォローがあったのだと思います。

後日聞いた結果では、手術を受けるにあたっては精神的には非常に落ち着いていたとのことでした。そして、何故そこまで落ち着いていられるのかという説明もあったのですが・・。


《物事, 人に対し常に距離を置いて接することにより、客観性を保っている》


・・。

敢えてノーコメントにしておきましょう。


日程決まる

当初、10月前半を目処としていた手術日程、延期を重ねてなかなか決まりません。

理由は、ドナーの脂肪肝。運動療法で落としてはいるけれども、なかなか思うようには進んでいないようでした。病院内の健康管理センターのようなところで、ルームランナーで走ったりとか、色々やっていました。

ドナーに適合するかの判断は、もう一度、肝生検で肝臓の組織を調べて行うということでした。


あとは、院内での手術室の割り当ての関係もあったようです。科によって使える曜日・時間帯が決まっているようで、消化器外科は毎週火曜日が手術日でした。

これによって、延びる場合は1週間単位での延期になっていました。


そして、いったんは11/8と決まりかけていたのですが、おそらくこの手術室の関係などで流れてしまいました。既に10月末にはドナーの肝生検も済ませ、脂肪肝も改善され準備が整っていたので、待たされ感たっぷりです。

最終的には、さらに2週間先の11/22に決まりました。

その間は、体調を崩さないよう厳重に管理されながら、ただ待っているだけの2週間でした。

手術日は決まりましたが、自覚するような症状は相変わらずほとんどないために実感はあまりなく、未だに

ほんとに手術するんかなぁ

という思いの方が強いぐらいでした。


インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセント(英: informed consent)とは、「正しい情報を得た(伝えられた)上での合意」を意味する概念。
特に、医療行為(投薬・手術・検査など)や治験などの対象者(患者や被験者)が、治療や臨床試験・治験の内容についてよく説明を受け十分理解した上で(英: informed)、対象者が自らの自由意思に基づいて医療従事者と方針において合意する(英: consent)ことである(単なる「同意」だけでなく、説明を受けた上で治療を拒否することもインフォームド・コンセントに含まれる)。説明の内容としては、対象となる行為の名称・内容・期待されている結果のみではなく、代替治療、副作用や成功率、費用、予後までも含んだ正確な情報が与えられることが望まれている。また、患者・被験者側も納得するまで質問し、説明を求めなければならない。

「インフォームド・コンセント」(2014年8月10日 (日) 07:23 UTC)『ウィキペディア日本語版』。


要は、改めて説明するので、お互い合意のもと手術しましょう, ということです。

手術3日前の11/19に、およそ2時間ほどかけて行いました。病院側からの出席者には、消化器外科の医師・看護師の他、麻酔科医, 薬剤師, 手術室担当の看護師, 医事課から事務担当の方も居ました。

事前に聞いておきたい事項はまとめていたのですが、先におおよその説明があったため、こちらからの質問は数点だけで済みました。

これも余談ですが、過去のインフォームド・コンセントでは、説明中に親御さんが泡吹いて倒れたなんていうこともあったそうです。思っていたよりも説明内容が生々しかったのでしょうか。

これまでも検査や輸血・麻酔など、同意書へのサインはしてきましたが、肝移植そのものの同意書はこの席上で渡されました。受ける本人用とドナー用です。

どちらにも、同意後も手術直前まで撤回する権利がある, という旨の記載がありました。当日になってもまだ、やっぱりやめた, と言い出せるということです。


そしてこの場で費用に関することもはっきりしました。

今まで請求されなかったのは、高額療養費制度関係の手続き中であることが、1つめの理由。肝移植するかしないかが流動的だったのが2つめの理由でした。

高額療養費制度は、いったん健康保険の自己負担分を支払った後に、高額療養費制度による自己負担限度額との差額が払い戻しされる仕組みです。これを、自己負担限度額のみの支払いで済ませられるように病院と市の間で手続きをしています, と説明がありました。

ドナーにかかった医療費は、肝移植した場合は保険適用, しなかった場合は保険適用外となり実費負担になります。

《今まで請求されなかった》と書きましたが、実はドナーにかかった医療費は、1回目の肝生検あたりまでの分は実費で支払っています。

肝移植することで、全て健康保険適用となり、支払い済みの金額との差額が出ます。計算上、この差額と高額療養費制度による自己負担限度額×入院月数がほぼ同額となり、追加請求はあっても微々たるものになるとのことです。

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インフォームド・コンセントの内容

・具体的な手術の進め方, かかる時間

・手術後の合併症

・手術の成績(生存率)

・麻酔の方法, 合併症

・服用する薬の内容, 副作用

・手術当日、手術室に入ってからの流れ

手術直前の状態

・病名:原発性硬化性胆管炎(PSC)

・原因:不明

・これまでの治療:内科的治療(投薬, 点滴, ERCP等)

・予想される今後の経過:肝不全, 多臓器不全

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前日~当日朝

前日ぐらいは落ち着かなかったり夜眠れないこともあるかもしれないと、精神安定剤をもらっておきました。

結果的には使うことはなく、夜も普段どおりよく寝られました。

そして当日。当日朝は早めに起きてぼちぼちと準備です。

このときは点滴は抜いてしまっていたので、ここで改めて入れました。血栓ができないよう弾性ストッキング(きついハイソックスみたいなの)というのも履きました。この辺りはどんな手術でも同じようなものだと思います。

手術室に入る時間は決まっていましたが、それも手術室から呼ばれて

さあ、いこか

ぐらいのものです。

ストレッチャーに乗せらることもなく、歩いて手術室前まで行きました。

自力で動けない患者さん以外は、ストレッチャーを使う意味がないので、歩いて移動するようにしているとのこと。つくづくどこまでもドラマチックな演出はありません。

一応、手術室の前までは家族の見送りもありました。


手術室に入り、まずは手術台の上に寝転がるのですが、台は思ったより小さく人が一人乗ったらいっぱいいっぱいというように感じられました。《台》というよりは《板》と言った方が良いぐらいです。

ライト類なんかも、小型・高機能化されているのか、ドラマみたいに《カッ!》と灯くような感じのものではなかったです。

いろいろイメージとは違うものです。


手術台に乗ったあとは、点滴から軽い麻酔薬(ボーッとなる薬と説明されました)が入ったり血圧計が装備されたり口に麻酔と人工呼吸用のマスクを当てられたりと、多くのスタッフに囲まれて準備が進んでいきました。

何故だか、麻酔が始まってもぎりぎりまで眠らずにおこうとか考えていました。

当然そんなことができることもなく、全身麻酔が入ってきた途端に意識はなくなって、次に目覚めたときは集中治療室でした。


手術は無事終了し、目覚めたときには、未だに我ながら名言と思っている言葉が飛び出します。

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原因不明の肝疾患で肝移植してから約10年, 闘いは今も続く その⑦ 肝移植 -「今日何日ですか?」

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