【第12話】『答えを出さなきゃ…』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
5日目。
おはようございます。
目を覚ますと、犬の散歩をしているおばちゃんがいた。
「あ、おはようございます。」
ちょっと焦ったけど、とりあえず挨拶をし、危ない者ではないことをアピール。
「寒いですね。」
なんて少し会話をしたけど、
外で寝てるんだから、そりゃ寒いに決まってる。
僕は、ここにいるのが気まずくなって、
トイレで身支度をし、出発の準備をした。
寒くて何度か目が覚めたけど、足の痛みは取れてるし、
何か頭がスッキリする。
「野宿も結構良いもんだ!」
人生で初めての経験。
しかも、一般の人はあまり経験のしたことのない経験。
どこか自分が特別な人間のような気がして、得意な気分だった。
日本の三大名水の湧き水をサーキュレーターに補充する。
いつもは、粉のスポーツドリンクを入るのだが、せっかくの美味しい水だ。
本来の味を堪能しよう。
「うーん。冷たくて美味しいぜ!」
天然のものは100%身体に良い気がして、水を飲むだけで嬉しかった。
準備は整った。
「さて、5日目。今日も生きますか!」
季節は変わっていく…
時刻は7:00。
今日の出発は朝早い。
そして、朝は…
寒い!!!
恐らく10℃くらいだったのだろうが、
10月下旬。
季節が冬へと変わっていき、日に日に気温が低くなる。
今まで夏仕様だった身体には、1℃下がるだけでも、体感的にはかなり寒く感じる。
辺りは秋の植物たちが咲き始め、
少しずつ紅葉も始まり、前に進めば進むほど、景色は色鮮やかになっていった。
常に、季節が変わっていくのが目に見えて分かった。
確実に時間は過ぎている。
そして、過ぎていく。
彼女と過ごした幸せな時間も、
ほんの2ヶ月ほど前の、地獄の様な日々の始まりも、
数日前の相模湖からスタートしたことも、
もうずっと前のことの様に感じた。
そして、今この瞬間も過去になる。
「忘れたくない。」
今、目に映るもの、耳で聴こえるもの、
肌で触れるもの、心で感じるもの、
その全てを、
「忘れたくない。」
そう思った。
とても景色の良い一本道を、しばらく歩いた。
すると…
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