【第13話】『神様がくれたもの』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
6日目…
いや、もはや何日目か分からん。
時刻は9:47分。
今日は遅めのスタートになってしまった。
さすがに身体の疲労が取れない。
何より、右足。
一晩寝ただけではもう治らないほど、傷めつけられていた。
入念にテーピングを巻いた。
テーピングをするだけで、結構な時間を喰う。
しかし、テーピングをするだけで一気に足は軽くなった。
テーピングを侮ってはいけない。
準備は整った。
「今日も限界に挑もう!」
今日のルートは、茅野市から諏訪湖を左回りで迂回し、
中山道を通り、国道19号線に出る。
諏訪湖を右回りするルートもあったが、
当初予定していた日数より丸一日遅れていたため、最短距離を行くことにした。
前へ進めば進むほど、必ず何か待っている、何かが変わると思った。
「ただ前へ。」
これが今、僕がしなければならないこと。
今の僕が唯一出来ること。
そして、僕が出来る最大のことだった。
茅野市を抜け、諏訪市に入る。
平坦な住宅街の道だが、歩道が狭い。
車が結構通るというのに、狭い。
今までほとんどが田舎道のだだっ広い道を歩いていたため、ものすごく窮屈に感じた。
ただでさえ大きな荷物を担いで歩くため、すれ違う歩行者にも迷惑がかかる。
僕は、一本逸れた畑の横の道を行くことにした。
しまった…。
こっちの方が歩道が狭い。
狭いというか、ほぼ無い。
でも、いい景色だ。
これだけで幸せだ。
しばらく歩くと、諏訪湖に着いた。
デカイな!
天気はあいにく曇りで、特別美しい訳ではなかったが、
デカかった。
地図を見てもそこに湖があると分かるような大きさは、
今まで見て来た景色と一味違った。
「ついにあの諏訪湖まで来たのか。」
この場所は、日本海までのただの通過点にしか過ぎないが、
一つのゴールをしたような気がした。
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