中2で補導されたヤンキー少女が、美容師を目指して公立高校合格を勝ち取りとうとう学年1位の点数を取った話
そもそも周りより勉強してこなかった分、人の10倍頑張らないと合格は見えてきません。
遠回りしている暇はないんです。
そして、この油断が早くも夏休み明けに出てくることになります。
逆戻り
長い夏休みを終えてすぐに定期テストがあります。この点数が合格のための1つの指標になります。
結果は27点。
前回より50点近く下がってます。予想以上に悪い結果でした。
本人もさすがにショックを受けたようでした。焦りも感じたでしょう。
ただ、私はチャンスだと感じました。
今まで無駄な勉強はさせていません。基礎を繰り返し繰り返しやってきたので、地力はついているはずです。
後は応用問題に取り組み、点数を取ってくる技術を身につけさせるだけです。
このタイミングで1度点数がガクッと下がってくれれば、もう油断もしないでしょう。
そういう意味では良いタイミングで失敗を味わってくれたと感じました。
それからの“その子”は目つきも変わり、集中力が桁違いになりました。
合格してやる、という気迫が凄かったことを覚えています。
この域まできたら、そうそうヘコたれることもありません。
私も本気でぶつかりましたし、簡単なミスがあれば本気で怒りました。
“その子”の素晴らしいところは、こちらの本気に応えようとする心と意志が強いところです。
そして中3の後期テスト。受験間近の時期です。
持ってきた答案用紙に返ってきた点数は76点。
「いける。」
公立高校合格の道がはっきりと見え始めました。
最後の試練
年が明けて受験までのカウントダウンが始まった頃、学校で三者面談がありました。
この時期の三者面談は志望校の決定に関するものがほとんどです。
残念なことに、公立高校を目指していた“その子”に学校の先生が提案したのは、私立専願でした。
志望校の公立高校合格は難しい、昨年のデータを見ても厳しい、と言われたそうです。
“その子”にとっては、これまでの努力を否定されたようなものでしょう。言葉にならない悔しさだったと思います。三者面談の途中で泣いてしまったと、後から聞きました。
そして、その場で願書に記入・捺印をしてしまったんです。
私はこの状況を塾の三者面談で知りました。
公立高校合格は現実味を帯びてきていたし、何より“その子”が成長していく過程をずっと見てきましたから、正直、憤りすら感じました。
学校の先生の気持ちも分かります。合格率を上げるために確実なところを受けさせたいのでしょう。
「学校の先生」という立場上、そのような判断がベストだったんだと思います。
でも、やっぱり私はこう伝えました。
「今からすぐ連絡して、願書を取り下げてもらってください」
“その子”もお母さんも、そんなことできるの?という顔をしていました。
「私立専願じゃなきゃダメなんてことは有り得ない。私立の滑り止めは、今の成績なら確実に合格できます。ずっと見てきた僕が保証します。公立にチャレンジしてはダメなんてことは絶対に有り得ない。」
「公立合格を目指して頑張ってきた。人の何倍も努力してきた。公立を受ける権利があると思う。
そして周りの人にも、たくさん協力してもらってきた。公立を受ける義務もあると思う。」
ずっと黙っていた“その子”が、やっと言葉を発しました。
「お母さん。お願い。」
それを聞いてお母さんはすぐに学校に電話してくれたんです。この時、母の偉大さというものを改めて感じました。
願書提出は明日ですから、と断られても、じゃあ書き直しに伺いますからどうかお願いします、とまで言ってくれたんです。温厚な方でしたが、同時に強い意志もお持ちの方でした。
こうして無事に公立を受験できることが確定したわけです。
もう後には引けません。合格するしかありません。
受験当日までの“その子”の様子は、まさに危機迫るといった感じ。
私もこの期間は口うるさく言いません、というより言う必要がなかった。一心不乱でしたから。無言で見守りました。
毎年の受験生を見ていると皆そうなのですが、頑張れば頑張るほど受験当日のプレッシャーは大きくなります。ちょっとでも不安な問題があると実力は発揮できません。
私は最後のアドバイスを伝えました。
「いいか?受験は必ずヤバイって時がある。そんな時は落ち着いて周りを見てみろ。全員ヤバイって感じてるから。」
どんな子でも受験当日は不安なものです。心の拠り所があることが、どれほど救いになるか。
当日の心の拠り所になってくれればと思い伝えた言葉でした。
合格発表
合格発表は必ず自分の目で見てくること。これは“その子”との約束事でした。
合格・不合格に関わらず、ここまで努力してきた結果を自分自身で受け止めること。
何かしら得るものはあるはずです。
発表当日、そろそろ結果でたかな・・・と時計を見ていると電話が鳴りました。
“その子”からです。どんな結果でも今までの努力を褒めようと決めていました。
「どうだった?」
「先生やりました!受かってた!」
「うおおおおおお!そうかやったか!おめでとう!おめでとう!まじか!」
結果、公立高校合格。
電話でお互いずっと言葉にならない言葉を叫んでました(笑)
補導され学校からも否定された元ヤンキーが、公立高校合格を勝ち取ったのです。
その後、高校に進学した“その子”は、学年1位、総合10位の成績をとりました。
素直にすげー。と思います。
今でも塾に通ってくれていますが、相変わらずチュッパチャプスは大好物だそうです。
あとがき
“その子”と一緒に合格を目指して奮闘したことは、私にとっても素晴らしい経験になりました。
結局のところ大切なのは「心」ですね。綺麗ごとを言うつもりはなく、本当にそう思います。
全国に展開している個別塾を営んでいますが、たくさんの生徒と向き合っていると、一人ひとり自分だけのストーリーを持っているんだなあ、と改めて感じます。
そのストーリーをどれだけ豊かなものにできるか、どれだけ彩れるか、そのお手伝いができるのがこの仕事です。
他の話もいくつかご紹介したいのですが、割愛します。共感してくださる方はご覧ください。
私は今もどこかの教室で、子どもと一緒に喜び、一緒に泣いています。
この先も新しいストーリーを生んでいければ嬉しい限りです。
これから将来を担う子どもたちへ、応援の気持ちをこめて共有していただけますと幸いです。
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