中2で補導されたヤンキー少女が、美容師を目指して公立高校合格を勝ち取りとうとう学年1位の点数を取った話

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「チュッパチャプス食べてるんだけど、どーしたらいいの?」

塾の講師として長年やってきたし、受け持った生徒は高校合格に導いてきた自負もある・・・


が、

そんな自尊心を打ち砕くには充分インパクトのある出会いでした。

最初に“その子”を見たときの感想

「チュッパチャプス食べてるんだけど、どーしたらいいの?」


「未知との遭遇」という言葉がぴったりだったかもしれません。



とにかく、初対面は、目をパチクリさせるベテラン塾講師とチュッパチャプスを舐める女子中学生。そんな感じでした。



初対面

“その子”が来たのは、冬の寒さが身に染みる時期。

教室内は活気で溢れていましたが、一歩外にでれば吐息が真っ白になります。


ちなみに、うちの塾では4回の無料体験やってるんです。

4回のうちに相性の合う先生を見つけてもらうため。先生と生徒の相性が合わないと、お互い、いいことないですからね。


で、“その子”も無料体験を受けに来たんです。

当時のことは鮮明に覚えています。忘れられません、衝撃的だったので(笑)


ある日、ドアを開く音と一緒に「こんにちは~」という声が。

“その子”のお母さん「こんにちは~」

私「こんにちは!寒い中ありがとうございます。」

お母さん「あの~先生、うちの娘本当に勉強嫌いで、だから今日は無理やり連れてきたんですが・・・」

私「そうだったんですね。まあ、勉強好きっていう子のほうが少ないですからね。」

お母さん「宜しくお願いします。」

私「こちらこそ宜しくお願いします。今日は体験なので気軽に受けてみてください!」


ごくごく普通の挨拶でした。

そして案内しようとした時、お母さんの後ろからひょっこり出てきたのが“その子”です。


とっても優しい目をしていて、しっかりお辞儀をしていたのを覚えています。


ただ・・・



明らかに勉強嫌いオーラまる出し。憎き敵を見るが如し。


そして、お耳には派手なピアス、お口にはチュッパチャプス。




(ちょっと待てちょっと待て。あれ?中2の子だよな今日の体験って?)


(初めての塾に飴舐めて来る中学生っているのか!?)


(飴捨てさせるか?いや、待て、それは可哀想か、あんなに美味しそうに食べてるのに)


(チュッパチャプス食べてるんだけど、どーしたらいいの?)



“その子“は何者か

“その子”は、どちらかというとヤンキーな子でした。

学校では遅刻・欠席の常習犯。

勉強嫌い、学校嫌い、夜遊び大好き!(あとチュッパチャプスも!)といった感じ。

そんな娘を見て、お母さんも当然のように心配していたようです。

というのも、中2の秋、塾に来るちょっと前ですね、“その子”は補導された経験があるんです。


ある日“その子”は夜遅く、誰にも言わずに家を出て行きました。

いつものことです。友達と繁華街で遊ぶため、夜の街に繰り出すのがお決まりでした。

確かに中学2年生の子にとって、夜の街は魅力的かもしれません。


とはいってもお金もなければ、遊べる店もたかが知れてます。

そして、暇をつぶすため友達とプリクラを撮り、コンビニの前でたむろしていた夜11:30、警察に呼び止められ補導されてしまったんです。


一番びっくりしたのはお母さんです。夜遅くに警察から電話がかかってきたんですから。

「お手数をおかけして申し訳ありませんでした。ほら謝りなさい!」

ひとしきり謝った後、家に連れて帰りました。


この事件があったのが中2の秋です。


実はこの頃、学校の先生ともうまくいっていませんでした。


後から聞いた話なのですが、「行ける高校なんてない、もう来なくていい!」とまで言われてしまったことがあったようです。

それほど目に余る生活態度だったのでしょう。


でも、“その子”と最初の授業をした時、「行ける高校がない」なんて全く思いませんでした。

もちろん成績は非常に悪かったのですが、そんなこと関係ありませんでした。


“その子”は素敵な夢と、何より、それに向かって努力できる素敵な心を持っていたからです。

お世辞でも何でもありません。

結局、夢とか目標があって、それを実現するためにどれだけ努力できるかが大切だと思うんです。

周りからヤンキーと見られたとしても、“その子”は人間にとって大切なものをしっかり持っていました。



最初の授業

さて、衝撃的な出会いから落ち着きを取り戻した後は、いよいよ始めての授業。


どの部分から教えようか・・・

苦手な分野からやってみるかな?

それとも得意な分野で自信をつけさせるか!


そんなこと全く考えてませんでした。

実は、授業が始まる頃には“その子”に興味津々。勉強そっちのけで話がしたくて仕方なかったんです。

最初の「衝撃」は完全に「興味」に変わってました。


あっ、ただ、私情を優先させた訳ではないですよ。

今までの経験からの判断でもあります。

そもそも、夜遊びで補導され、学校の先生に否定され、チュッパチャプスを舐めて来る子に、「じゃあ今から勉強してみようか」という方が無理がある。


私は塾講師の仕事に就いて以来、初めて塾に来た子の様子をしっかり観察することにしています。そうすれば、だいたいどんな子か分かってきます。

“その子は”初対面でしっかりお辞儀が出来ていました。持論ですが、たくさんの生徒を見てきて思うことは、お辞儀ができる子は素直な子、ということです。


実際“その子”も素直な子でしたので、最初の授業で強制したら勉強してくれたと思います。

ただ、それじゃあ全く意味がないんです。授業の間だけ勉強して、後は元通り。勉強のハードルは更に高くなると思います。


肝心なのは、心を開かせること、応援してくれる・味方でいてくれる大人がいると感じてもらうこと、です。素直であればあるだけ、相手に報いようとする気持ちも強い。こちらが本気で取り組めば必ず応えてくれるんです。


ですので、最初の授業はコミュニケーションを取ることだけ考えていました。



“その子”の夢

「よし!じゃあ今日から担当します!宜しくね!ところでさ、夢ってある?」


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