ある日僕はクラスの中でひとりだけ、握手を拒否された。
あれは、いつだったかな。小学校のときかな?
確か運動会かなんかの練習のとき。
運動会ってさ、組体操とか、バディ組んでなんかやるっていうのあるよね。
そのときの子供の僕は、子供ながらに「僕は汚いんだ」と
自分で自分に思い込ませた。
なぜかって?
僕は、触ってもらえなかったから。
二人三脚とか、組体操とかって手を繋いだり腕を組んだりするよね。
僕は、触ってもらえなかった。
正しくはいうと、仕方なく触ってもらえた。触らせてもらえた。
周りは楽しそうに握手したりしてるのに、僕は体操服の隅っこをつままれ、
僕自身はその子に触ることを拒否された。
そして先生に「井上くんなにしてるの!!ちゃんと手をつなぎなさい!」と。
僕は言いたかった。触らせてもらえないんだもん。と。
でも先生に怒られたくなかったから、ごめんなさいと言って手を握らせてもらった。
そのときの目は忘れなれない。僕の腕を見て明らかに嫌がっている。
子供の僕ですら、「あ、いやがられてるな」ってわかる。目。
※当時の僕の腕の雰囲気※

汚いかな?綺麗でしょ?
僕は毎日お風呂に入り、綺麗に体を洗っていました。
たぶん男子の中では丁寧すぎるくらい。
でも不思議。僕はどんなに綺麗にしても汚い人らしいんだ。
どんなに綺麗にしてても、泥んこの人よりも汚いんだ。
でもね、長袖着て隠そうと思ってもダメなんだ。
かゆいんだ。夏は汗でかゆいんだ。
でも半袖着ると、汚いんだ。
そう自分で思ってから子供の僕は、周りの目を気にした。
誰かに触るときは一言謝ってから。
誰かに触られないように、同じものを触らないように。
給食当番のときも、心の中で謝っていた。
みんな僕がさわったお茶碗で食べてくれるかな?と不安だった。
休憩時間も、運動をしなかった。かゆくなるから。
でも誘われてたら断れないんだ。もう誘われなくなるから。
そんなときはものすごいかゆいのを耐えて、笑うんだ。
で、トイレでこっそりと掻くんだ。
プールの時間
僕たちアトピーっ子は脱ぐことを許されない。
けど、休むこともよく思われない。
だって、裸になったら全身汚い僕を見られる。
みんなが一緒のお水に入りたがらない、
傷口にしみるんだ。塩素が。
けど先生はこういうんだ。
先生「なんで毎回見学なんだ!ちゃんと授業に出ろ!」
って。出たいよ。でも嫌なんだ。
お医者さんに相談しても
お医者さん「まあ、多少は入っても問題ないですよ^^」
っていうから、親も
母「気にしすぎよー。大丈夫だよー。先生もお医者さんも大丈夫って言ってるじゃない^^」
っていうんだ。
わかってるよ。入っても大丈夫なのは。
でも嫌なんだ。あの目で見られるのは。
友達に嫌がられるのは。怖いんだよ。
なんでわかってくれないんだよ。
修学旅行の時間
共同生活。これはアトピーを患う人間にとって、苦痛でしかない。
もちろん、理解者だけだったらいいんだけど。
知らない人との共同空間上で、薬を塗ったり、
夜に無意識でボリボリ書いてしまうことは好奇の目にさらされる。
もしくは夜うるさくて迷惑と言われる。
それがストレスで、悪化するんだ。
行きたくないんだ。正しくは行きたいんだけど、
全力で楽しめないんだ。
だってお風呂での目が気になるし、
やっぱり他人と24時間以上一緒にいるわけだから、
無意識にストレスがたまってしまうんだ。
みんなみたいに無邪気に楽しみたいけどできないんだ。
相談したくてもできないんだ。
だって、何言われるかわかってるから。
アトピー子「僕はなんでアトピーなんだろう?なんで悪いことしてないのに変な目で見られるんだろう?女の子から汚いって言われるんだろう?」
アトピーっ子は子供ながらに自分が普通ではないことに自覚を持ちます。
そして、遠慮がちになり、自信もなくし、籠もりがちになります。
相談できる人がいないんです。理解してもらえないんです。
アトピーは命に別条はありません。
食べることも自分で歩くこともできます。
なので障害を持たれている方と違い、一般的な健康体の方と、
同じように扱われます。
無知な大人たちは、子供の心の叫びを感じることなく、
無責任に「大丈夫」と言います。
子供は子供心ゆえ、自分となにか違うアトピーっ子のことを自然と好奇の目でみます。
そして、その悪意のないそれが、本人にとって耐え難い苦しみとなるのです。
アトピーが本当に僕たちを苦しめるのは、
365日24時間体制でかゆかったり、肌が荒れたり、
顔が赤くなったりすることではなくて。
もちろんかゆいのも辛い。
夜も熟睡できなくて、朝起きたら布団に血がついてて、
傷が痛い...とか、顔が真っ赤とか。
アトピー 顔 で検索してみてください。
想像してみてください。そのまま外へ「行かなくてはいけない」ことを。
熟睡もできていないので、睡眠不足になります。
皮膚の回復に力を使ってるのか、疲れがとれないのです。
でも周りの人になかなかその苦しみがわかってもらえない。
そうやって「精神的に」辛くなるのです。
これがアトピーの最大の症状です。
かゆいことや皮膚が荒れることなら耐えられます。
でも、この感覚をなかなか理解してもらえず、
いろんなことを我慢しなければならないのが、この病気の最大の辛さです。
だから、そんな人が街中にいても気にしないでほしい。
悪意なき好奇心が一番傷つくんです。
もし自分の近くにそんな人がいたら「本当の意味で」普通の人と同じに接して。
アトピーで荒れた肌に触ってもうつりません。かゆくなりません。
だってただの「アレルギー反応」だから。
花粉症の人の近くにいても花粉症にはならないよね?
顔が赤く荒れてても、気にしないで普通に接しててください。
「大丈夫?」もいりません。だって大丈夫じゃないから。
ただただ、普通に何事もなかったかのように接してあげてください。
たまに寝不足っぽくてきつそうな時だけ、声かけてあげてください。
きっと夜かゆくて、眠れなかったんです。
会社勤めの場合、もし部下にそんな方がいたら少し休ませてあげてほしいんです。
普通の人と同じ仕事量を、かゆくて集中できない中頑張っています。
外回りで好奇の目にさらされてストレスを感じても耐えています。
やっと仕事が終わったと思ったら、夜はかゆくて眠れません。
でも同じように朝が来てしまいます。
特別扱いとまではいかなくても、そういうハンディを背負ってる中、
必死でついてきてるんだってことを理解してあげてください。
花粉症の方なんかはわかるかもしれませんが、
集中したくても目がかゆいとか、しんどくないですか?
アトピーの彼ら、彼女らはそれが全身なんです。
温泉でそういう肌の人を見かけても、気にしないでください。
あ、アトピーなんだなー温泉きくなーそれくらいで大丈夫です。
くれぐれも「うわ」って視線を投げないでください。
敏感に感じてしまうんです。
でもね、アトピーっていいこともあるんです。
それはまた次回に。

