母に抱く殺意 第8章

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告別式当日、慌ただしく支度を済ませ、姉は喪主として葬儀社と打合せ、私は、伯母たちと式場の準備を見ていた

告別式の会場は、伯母たちの夫婦と姉夫婦と私の義父母、夫が前方の席に座り、一番後ろのほうに他の参列者が座った

母と母方の親族は姿を見せず、広く開いた親族席。重苦しい異様な雰囲気もあった

姉から焼香を始め、私、義兄、夫、伯母たちが続いて焼香を行った

淡々と、静かに葬儀は続いた

納棺の時、親しい親族だけが花を手向け、棺の中は花で一杯になった

痩せこけた父の姿は、痛々しく、親しい人にしか見せたくない姿になっていたが、花に囲まれ、穏やかな表情に見えた

棺が閉じられる前に義母が

「なっちゃん、最後のお別れだよ」と言った

私は、”違う、違う!お別れじゃない”と首を横に振った

葬儀の間、あまり泣かずにいたが、涙が一気にあふれた

蓋が閉じられ棺に布をかける瞬間、父が亡くなっていることを明確に表していて、それが一番悲しかった

姉の弔辞の時、一緒に横に立った

姉は途中で泣き出し、言葉が続かなくなり、私は姉の背中を励ますように叩いた

私は、唇をかみしめて、姉の言葉を聞いていた

そして、父の亡骸を荼毘に付し、初七日も済ませ葬儀はすべて終わった

父の遺骨を姉は持っていたくないと言い、理解できなかったが、私の家に父の遺骨を置いた



葬儀が終わり、翌日、父の取引口座の凍結の為、銀行に出向いた

母の父が亡くなった後の行動を考えたら、急がなければならないと感じたからだった

口座を凍結し、裁判所の書記官にも連絡をいれた

すると、後見人は存命中のみ活動し、亡くなった後は、相続として一から手続きをやり直さないといけないと説明してくれた

後見人が決まっていたものの、後見人決定から、実際に活動するまで2週間~3週間はかかり、その間に、父は亡くなってしまっていた

てっきり、決定後すぐに活動してくれるものだと思っていたので、落胆は大きかった

母が葬儀に全く顔を見せず、葬儀費用を姉が負担することになった

姉の為にも、下ろせる預貯金を探さなきゃと、翌日も父の口座の取引明細(入出金のすべての記録)を出してもらう為、書類を揃えて銀行の窓口へ出向いた

待たされた後に、父の口座の入出金の記録を見て、絶句した……

父の勤務先から払われた給料、退職金、他手当や財形の数百万になる金額が父の亡くなる数日前までに引き出されていた

父の命が危ないことを母は知っていたのだ。だから、限度額いっぱいに数日かけて預金を下ろし、亡くなった当日には、数百円の残高になっていた。

なぜ、状態が危ないと言ってくれなかったのか。

もし、わかっていたなら、伯母たちも呼びたかったし、もっと一緒に過ごしたかったのに。


今度こそ、母をぶっ殺してやる!!

包丁買って、実家に乗り込んで、警察を呼ばれようが母を刺してやる!


でも、それをしてしまったら、まだわかっていない父のことがうやむやになる…また我慢しなけらばならない、そう思ったら、涙が止まらなくなった

車の中で、泣きながら無理して深呼吸して冷静さを取り戻し、姉に連絡をいれ、状況を話した

姉は、母が家を留守にしていることを教えてくれた

伯母たちに詰め寄られるのが嫌で、雲隠れしたのだろう

後日、姉と家庭裁判所で相談することに決めた

翌日、実家に行き、鍵屋に家の鍵を開けてもらい、家の中に入った

父に関する書類が雑然と山になっていて、空になった香典袋が何枚もあった

葬儀に参列していない母に、受け取る理由などないはず…

実家に入ってみて、父を家に入れてあげたかったと、つくづく思った

心身ともに、疲れがMAXに達していた


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