パプアの森の勇者デメギョ 最終章7

著者: Ookubo Aklra

千恵子姉ちゃん達は盛り上がっている。

拓也くんは、千恵子姉さんと寝らんばやろと言う、とりあえず事情を説明した。

明日は、生徒会長の初仕事、新入生に挨拶をしないといけない、帰って文章を考えて覚えんばいかんと言う事、その前日に、スナックで酒飲んでカラオケ歌って、モーテルにしけ込む生徒会長は、全国探しても、何処にもいないと言う事、無断外泊はしたことない、わかりやすく説明した。

「じゃあ、明日から生徒会長として真面目に頑張れ、今日まではよかさぁ〜。」拓也くんの悪魔のささやき、千恵子姉ちゃんの放つフェロモン。

まるで、北風と太陽、旅人はマントを脱いだけど、僕はパンツを脱ぐことになった。

日本初の国立公園、雲仙中腹にあるモーテルに向かった、2対2別々の部屋に入った。

千恵子姉ちゃんは「先にお風呂入って。」と、言った。

僕は緊張していた、モーテルに入ったのは初めてで、ピンクの照明、でっかいベッド、風呂場に入って電気をつけると丸見えになる風呂、サッサとシャワーを浴びた、入れ替わりで千恵子姉ちゃんが入った、電気が消えた、シャワーの音だけが部屋に響いた。

僕はベッドにパンツ一丁で横になった、しばらくすると、「カチャッ。」と、鍵の音がして、風呂場から出てきた、見ると、上半身に白いブラウスを着てただけ、ボタンは上から3番目まで外していた。刺激的だった、オトナの女、胸元から目がはなせなかった

それから、あっという間に終わった。

しばらく天井を見上げていた。

「ありがとう。」千恵子姉ちゃんが僕の方を向いて。

「アキラのおかげで、ちょっとは可愛い女の子になれたかも。」うん、かわいい、確かにかわいい、化粧しない方がかわいい、僕も千恵子姉ちゃんの方を向き、「ありがとう。」と言った。

「どうして。」と、聞いてきた。

「気持ち良かったあ〜。」と、答えると。

「それなら良かったあ、私もなんか吹っ切れたみたい、明日からまた頑張る。」うん、男として、最低限の仕事はこなしたかもしれない。

「実は今日から生徒会長で、9時から在校生代表の挨拶ばするとさ。」そろそろ切り出さないと、

「アキラは、生徒会長なんだ、すごいね、挨拶頑張ってね、自信持っていいよ、私が認めた男なんだから。」

「それで、一度家に帰って、準備して学校に行かんばけん、もう帰るよ。」と言うと、さっきまでのムードが一変、表情を変えて

「こんな山奥に一人で寝れる訳ないやろ、ダメダメダメー。」怒りだした。

仕方ない、姉ちゃんが眠った隙に抜け出すしかない。

このモーテルはバンガローみたいに一つ一つ独立している、フロントの前を通る必要が無い、部屋の鍵さえ開けることができれば、脱出できる。

「わかった、もう寝よう。」と姉ちゃんに背中むけると、

「私、腕まくらしてくれないと眠れないよう。」と、甘えた声で言う、マズイ、ここで腕まくらをすると、脱出がさらに難しくなる、しかしここで抵抗してこじれるより、安心して眠ってくれた方がいい、僕のコンピューターがカタカタ音を立てて動きだした。

「いいよ。」と、千恵子姉ちゃんを右腕に抱いて30分ほど経つと

「スーハー、スーハー。」息が整ってきた、チャンス到来「すう〜っと。」痺れた腕を抜くとしばらく静止、まだ寝ている、イケる、急いでシャツを羽織り、ジーパンをはき、ボタンも留めず、ベルトも締めず、カチャカチヤ音の鳴りそうなバックルを左手に握りしめ、外に出れるドアのノブを回した。

「かちっ。」開かない、暗がりの中よ〜く見ると、ドアノブの中心につまみが付いていた、そこを回すと鍵が開く音がした、改めてノブを回す、ドアが開いた、音は最低限に抑えた。

外は漆黒の闇、チョット寒かった、ここから自宅までは、10キロまでないけど、5キロ以上、ずっと下りだから走って帰るのも無理じゃあない。だけど怖い、明かりが全くない、山の木々がザワザワ音を立てている、風も「ビュービュー。」鳴っている、うしみつ時だ、何が起こってもおかしくない。

僕は歯をくいしばり、腹に力を入れて、走り出した。

怖くて、後ろを振り返らず走りつづけた、かなりのスピードが出てたと思う、最初は気になっていた、木々のざわめきも、風の鳴き声も、もう耳には入らないひたすら走った。

家に着くと、いつもの所に隠してある鍵を出してコッソリ、ドアを開けて、2階の自分の部屋に入った、親には気付かれていないようだ。

翌朝、何食わぬ顔で、朝めし食って家を出た、親も、何時に帰ってきたのか聞いてこなかった。

さて、これからだ、全校生徒800名の前での挨拶だ、緊張するだろうけど大丈夫、なんとかなるはずだ、今まで何とかなってきた。

いつものように米を迎えに行った。

「秀行く〜ん。」米屋の引き戸を開け声をかけた、バタバタ2階から降りてきた、髪がボサボサだ、せっかくのオシャレさんが台無しだ。

「昨日の夜電話したけど居らんやったとん。」米が言う。

「うん、ちょっといろいろあったと、そいでんもう終わった。」

米はそれ以上何も尋ねてこなかった。学校に着くと、職員室に校旗を取りに行き、

屋上のポールに校旗を掲げた、これも生徒会長の仕事だ。

昔柔道で鍛えた大きな体を揺らし、ポマードでビッチリオールバックにしている校長先生が近づいてきた。

「よし、今日はちゃんと挨拶考えてきたか。」

「はい、だいじょうぶです。」

「ここからお城に向かって大きな声で読んでみろ。」

僕は、ポケットから紙を出し、大きな声で読み上げた。

「よし、最初が肝心だ、気合いを入れてがんばれ。」肩を叩いて、降りて行った。

僕は、雄々しい島原城に勇気をもらい、屋上に吹く春の爽やかな風に緊張をほぐしてもらって、本番会場体育館に向かった。

校長先生の挨拶は終わった、さあ次だ。

司会の小島先生が「続いて、在校生代表大久保陽くん。」体育の先生だから声がデカイ、気合いも入ってる。

僕は壇上に上がった。

「新入生の皆さんおはようございます。」

最初は緊張していたけど、だんだん乗ってきた、

「島原商業高校は実業高校ですから、ほとんどの皆さんは最後の学生生活になります、私達在校生とともに、悔いのない3年間にしていきましょう。」

終わった、上手くいった、壇上を降りるとみんなが拍手で迎えてくれた、長老も、いや、校長先生も、笑っていた。

パプアの森の勇者 デメギョの誕生した瞬間だった。




















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