フィリピンで警察に捕まって帰れなくなった日本人の話パートⅤ

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マニラ市内にある国際空港のターミナル1ではアロハ君を待ちわびた部長と私の姿がありました。

アロハ君には車の中でおおよその話の概要は聞かされていたようです。



「あの、本当に申し訳ございませんでした」



少しやつれたアロハ君でしたが、彼が一番元気良かったようです。


「さっ、挨拶はいいから早く出国してください。出国さえ終われば晴れてあなた達は自由の身」


足早に出国カウンターに向かい、二人並んで出国の手続きをしていました。

その姿がなんともほほえましく、心から「良かったと」思いました。


私も午後から休暇を取り直そう、すぐにチケットを手配すれば夕方には無人島に到着出来るかもしれない。

サンセットには大きく沈む太陽をみながらビールが飲める。最高のバカンスだ!









「ん?少しもめているみたいですが?」






二人の様子を伺いながらNBIの若い職員が怪訝そうにつぶやきました。



「どうしたんだろう?ちょっと様子を確認してみて?」



若い署員に出国カウンターに行かせ状況を確認させると若い署員があわててこちらへ戻ってきました。


「出国出来ません、出国に制限がかかっているようです」


「何かがおかしい、昨日まで出国に制限はかかってなかった。エルソンに電話をして状況を確認してもらうように」



あわてて署員がエルソンに電話をし状況を確認していました。さっきまの陽気なフィリピン人とは違い、携帯電話を握りしめながら次第に眉間にしわを寄せていきます。




「大変です!二人に逮捕状が出ています」






「一人は未成年者レイプ、そして一人は麻薬所持」



麻薬?もしかして・・・



「部長、警察署で何か触りませんでしたか?砂糖かなんか入っている袋みたいなもの?」



「ふくろ?あっ、なんだかパンケーキの材料だとかいって日本人が私に見せてくれたけど・・・」



「それだ!部長の指紋がその袋にべったりと付いていたそうです。部長。それは麻薬です。部長まで嵌められてました。」



敵の方が一枚上手でした。



アロハ君が拘留されていたカピテの警察署からの連絡ですぐに空港に向かったと判断した日本人の詐欺師は空港へ出国差し止めと逮捕状請求をかけたそうです。




麻薬所持も無期懲役または・・・




「死刑」・・・




あっという間のも早業、もはや自分の保身に走った日本人の詐欺師は証人を消す作業に入っていました。



さっきまで正義感たっぷりの精悍な顔立ちのNBIの若い署員が下を向きながら


「逮捕状が出ている以上、私は職務を全うするため、お二人を逮捕しなければなりません」 



もはやこれまで。このまま彼らが逮捕されてしまうと正式な逮捕状だけに簡単に帰国は出来ません。場合によっては本当に一生をこの国で終わらせなければなりません。


急な展開にどうする事も出来ないむなしさと憤りが広がり、にぎやかな空港の中に私たちだけが終始絶望のふちに追い込まれ静かな時が流れていました・・・










「しかたない・・・エンジェルだ・・・」





「エンジェル?」


若い署員が怪訝そうに聞きなおしました。




私には最後の切り札が一枚だけ残っていました。


しかし、それは決して使ってはいけない最後の最後の切り札でした。



続く・・・

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