中卒・元自営業が6000人規模の上場企業で働いてみて思ったこと~顔のない上司~

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著者: 香取 正博

やはり「顔のない上司」がいる。



顔のない上司の「正体」


大きな会社には顔のない上司がいる!


出向を命じられ、片道切符の島流しから私は退社を決心した。


「顔のない上司」は己自身が作り出したものなのか。


組織という全体主義に近いような「理念」そのものなのか。


「顔のない上司」は一体誰なのであろうか。



ずっと違和感があった。



しかし最後に社長との面談のチャンスを得られた。


入社したての者が大企業の社長とディスカッションできるということは本来であれば異例であり、

チャンスをいただけて大変有難い。そういう意味ではとてもおもしろい会社であった。


私は一度、「顔のない上司」のために事業プランを練り直し、

「顔のない上司」のために事業計画書を作成していた。


そんな計画書では想いは伝わらず、ブレブレであった時期があり大変悩んでいた。


しかし改めて思い返し原点に戻った。

「顔のない上司」を完全に無視し改めて事業プランを立て直した。

建前など捨て、本音だけでいこうと決意した。


もしも今回うまくプレゼンが通れば、新規事業立ち上げができる最後のチャンスであった。


しかしながら事業提案をしていたのだが、


社長から直接ご指摘を受けることや、言わんとすること、それ自体がなんだか予測がついたのだ。



なぜならば「顔のない上司」そのものであった





大きな会社には顔のない上司がいると違和感があったが、



顔のない上司の正体は「創業者」



社長そのものの理念であったのだ。



もしもこれが「創業者」ではない会社であったのなら顔のない上司はいないのかもしれない。


強烈なリーダーが創業した大きな会社。


その強烈な創業者の想いを、社員は常に形にしてきたから、

理念に基づき組織として強固に形成されたのだろう。


これは恐らく外部から来た私にしかみえないかもしれない。


仮にも元経営者の端くれであり、私はすでにオリジナルの理念があるからだ。


私は憧れの会社員になり初めて感じた。


ただ憧れの大企業に入りたいだけでは、「顔のない上司」が現れ、

自分が自分ではなくなるような、クーラーの効いた快適なオフィスでの死を意味する。


もちろん会社の理念も正しいし否定するつもりもない。


会社というのは「理念」が共有できなければ、最高のパフォーマンスはできない。


出向は覆らないので予定通り退職することになったが、

私は憧れの大企業に勤めて様々な経験ができた。


これまで経験できなかったことができ、採用してくれた直属の上司には感謝を伝え、

最後は堅い握手を交わした。しかし上司の手の力は、なんだか少し弱くも感じた。



そして会社をあとにし己の不甲斐なさを痛感し、ほんの少しだけ目頭が熱くなった気がした。



憧れの大企業の会社員は4カ月で終わったが悔いはない。



そして私は八重洲の雑踏に消えた。






「顔のない上司」



あなたの会社にはいますか?

 



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