③マグロ詐欺を繰り返していた詐欺師集団と戦った話
社長
「証人?別に行かなくてもいいんじゃないか。無理にマニラに行って大丈夫か?危険じゃないのか?」
私
「いえ、詐欺師にはまだ私はただのマグロのバイヤーだと思っています。それに・・・」
社長「それに?」
「やっぱりこのままなめられっぱなしで奴らを野放しにしている訳には行きません」
冷静に対応してましたが所詮社長も海の男です。熱い話が大好きな事は私もよく存じ上げておりました。
社長
「わかった。それじゃ日程が決まったらいってくれ、出張扱いにするから」
正直言って菊池さんを助けられる自信もありませんでした。しかし同じマグロを生業としているものとして日本人が水産詐欺で騙されるのはどうしても許しがたいものがありました。しかも今回は多くの日本人が騙されています。
根拠はありませんが、戦いは始まったばかり。
まだまだ逆転のチャンスはあると思っていました。
何とかなるだろう!
船だけに・・・
乗りかかった船だっ!
その日の午後、会長の弁護士さんに船頭あてに内容証明付き郵便を出してもらうようにお願いしました。
船頭は私たちが初めてマニラに行った日の夜、儲けの分配方法でもめて怒って日本に帰ったそうです。日本に到着した日、船頭から私宛に連絡が来ました。
しきりにガマ社長や女形社長の悪口をいい、被害者は自分だと訴えていました。早く働きたい、新しい就職先も紹介してほしいとお願いをされていました。
あまりにも変わり身の早い船頭にあきれながらまずは船頭にターゲットを絞りミッション開始です。
こちらにも後がありません。来月には手形の決済日がきます。ここでなんとしてでも現金をつくらなくては・・・
はやる気持ちを抑えつつ船頭からの連絡を待つしかありませんでした。
会長の会社が倒産すれば、当然菊池さんを助けられる術はありません。邪魔者を刑務所に押し込んでガマ社長達は船を自由に使うでしょう。
しかし、せっかくつかんだ金づるをそうやすやすとは見切りは付けたくはありません。しぼれるだけ絞りたい。スポンサーである会長の資金力がすべてのカギで彼らもまだまだ様子見の状況でした。
船頭からは新しい就職先の件で以前からたびたび連絡は取っていました。
こちらが協力的で友好的な態度を取れば必然的に色々な情報を入手できると思ったからです。
チャンスは船頭の電話からやってきました。
船頭「ナベさん、相談に乗ってほしい事があるんだけど」
私「私も丁度船頭さんに電話をしようと思っていました。船頭さんに言われていた貨物船ですが一人欠員が出て乗務員を探しているとの事でしたが興味ありますか?」
船頭「じゃ、尚のこと会って話がしたい。今日はどうかな?」
会長が内容証明付き郵便を送って3日目の事でした。船頭の暗い語り口から事態の深刻さがうかがえます。十分動揺している様子で有利に事が進みそうな予感は致しました。
船頭
「三千万円支払えって書いてあるんだけどどういう事かな?」
船頭には去年の夏から支度金を合わせて合計1700万円の支払いがあります。マグロを獲るためベテランの漁労長が必要だと女形社長から船頭を紹介されたそうです。年間1700万円払ってマグロを一匹も獲らない船頭。
当然、損害賠償も含め合計3千万円の請求を船頭がサインをした「1700万円の計算書」のコピー共々船頭には内容証明付き郵便で送っていました。
私
「会長は女形の社長とガマ社長に騙されたといっています。近く詐欺罪で告訴すると言っていましたよ。船頭さんも仲間だと思ったんでしょう。支度金含め一匹もマグロを獲らなかったんだから損害賠償の支払い義務も当然出てきますよね」
船頭
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