③マグロ詐欺を繰り返していた詐欺師集団と戦った話
「おれはやつらとはグルじゃ無い。もらったお金だって給料だ。俺だってタダで仕事は出来ない。毎月100万円くれるって女形社長から云われたから俺は来たんだ。」
私
「それではきちんと裁判で主張すればいいじゃないですか?」
船頭
「いや、裁判はだめだ。長い間時間がかかりすぎる。それに俺はこの一年の間にあと半年間勤め上げなければ船員年金の対象者にならないんだ。それまで裁判を待ってもらうように会長に話そうか?」
何処までも身勝手な考え方をする船頭にほとほと呆れました。
しかし、船頭は明らかに自分が追い込まれている様子に怯えていました。
なんせ年間1700万円をもらって何も成果を上げていない。普通の企業では考えられない事です。
船頭もそのあたりのうしろめたさや認識はある様子で今回の内容証明付きの請求書を目の当たりにしても警察や弁護士に相談できずにいたようです。
私
「船頭さんがその問題を抱えている以上、いつ裁判に呼ばれるか分からないので乗組員のあっせんの話は出来ませんね。会長と話をして和解されてみては如何でしょうか?会長だって話せば分ってくれるはずですよ」
まるで砂山に棒を一本立ててそれを崩さないように慎重に慎重に外側から砂を少しずつ取ってゆく棒倒しをイメージしながらゆっくりと、時には大胆に船頭との話を進めていきました。
船頭「うう・・・・は・・半額じゃダメかな?」
私 「半額とは?」
船頭
「いや、だからさ、1500万円で何とか話付けられないかな?俺だってナベさんの紹介の船で働き始めりゃそれくらい何とかなるからさ、ローンで1500万円だったら会長だって話に乗ってくれるだろう?うん、それがいい。」
頭の中の棒がぐらっと傾きかけました。
はやる気持ちを相手に気付かれないようにするのが精いっぱいでした。ローンで押し切られたらせっかくの計画がすべて台無しです。
押し切られないように私の中で最後の切り札を出しました。これが通らなかったらすべてが終わりになります。
私「和解金のローンって聞いた事がありません。あくまでも現金一括払いです。きちんと会長と和解すれば私も何事もない事にして船の仕事も紹介出来ます。」
船頭
「・・・・・・・・・・・・」
私
「これがだめならこの話は無しにしましょう。船頭さんこの前5千万円の貯金があるっておっしゃったじゃないですか?」
「民事裁判なんかになったらその貯金だって凍結させられますよ。相手も弁護士さんを通すくらいだから本気の筈ですよ。」
「詐欺で訴えられて長い間裁判になって損害金まで全額で取られたらせっかくの船員年金もすべてパァですね。」
船頭
「・・・・・・・・・・・・・・・わ・・わかった、じゃ1400万円でどうかな?」
何処までもお金に固執する船頭でした。この期に及んで100万円値切るとは・・・しかし何とか作戦は成功しました。船頭と会長は1400万円を引き換えにすべて和解するとの合意書を交わしました。
変わり身の早い船頭はすぐに1400万円を振込み、しきりに会長にガマ社長や女形社長を「あいつらは詐欺師だ」といっていたそうです。
そして、せっかくの就職先はもっと若い乗り組員が希望したと先方から連絡があったと船頭には伝えました。
その後、必死になって船頭から毎日のように連絡が来ましたが、当然定年近い船員の就職先は厳しかったようです。
会長からは幾度ともお礼の電話を頂きました。会社も首の皮一枚で何とか倒産せずに済んだようです。
しかし、大きな問題は菊池さんの裁判です。フィリピンに人質を取られたまま戦うにはあまりにもリスクが高いからです。
前もってフィリピンの弁護士と打ち合わせした通り、私とガマ社長が同じ日に証人喚問で呼ばれました。
いよいよガマ社長との直接対決です。
10年も20年もかかるかもしれないこの裁判。落としどころが大変難しい裁判です。
続く・・・
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