空を飛ぶことをやめてから。♯2

オノボリサン 

 さて、そんなドラマチックなワンシーンもあっという間に過ぎ去る。僕は元々、福岡の出身であり、大学は関西の大学である。東京にいたのは数日で、結局無事に内定を取ることが出来たので、数日後に関西に帰宅した。また数ヶ月後にここに来れる。そんな想いを旨に帰りの新幹線に乗った記憶がある。

 関西に帰り、現実に戻るとともに、内定をもらった現実を改めて実感するようになる。大学の友人、ゼミの先生、バイト仲間。良くも悪くも誰もが知っている会社の誰もが知っている職種。大手の企業に入ることであれば、まだしも、老若男女に認めてもらえる仕事もそうそうない。ただ、パイロットの仕事は違った。だからこそ、完全に有頂天だった。多くの友人からは祝福の賛辞をもらい、大学からは就活成功者!のような扱いを受けた。学内の広報誌にも出た。そのときのニヤニヤしている顔を今見ると虫酸が走る。ただあのときは、本当に毎日がキラキラと輝いていた。

 元々、知り合いだった人間ならまだしも、更に勢いづかせたのが、同期だった。パイロットの同期だけで44名おり、総合職がその年50名程度、整備士が30名程度、キャビンアテンダント約600名。グランドスタッフが150名程度と、同期の人数が多い。正確な人数ではないことを詫びておこう。更に加えて、女性が多いことも華やかさを演出した。大学の授業そっちのけで、内定者飲み、内定者懇親会、内定者旅行やキャンプと多くのイベントが開催された。女性が多いためか、もちろん、いろんな話があったが、ここでは割愛しておく。ここは別途タイミングがくれば書こうと思う。

 入社日までの数ヶ月、あっという間に過ごした僕は、至極当然、あっという間に社会人になった。

目の前にとてつもなく大きな飛行機が間近に見える格納庫で、一人一人名前を呼ばれる瞬間は誇らしく、そして、何よりもうれしかった。ただ、その日は、気温が低く、寒すぎて早く終えてほしい、そんな風に思っていたことも確かだった。これから始まる。パイロットへの道が広がっている。この仲間と。そんなことを考えるだけでその寒空さえ、心地よく、目の前の冷たい飛行機でさえ、まるで夢がつまって見えた。確かにあのときに僕はその仲間と飛行機を飛ばせる。そう思っていた。

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