空を飛ぶことをやめてから。♯4

就職活動

 2009年、今もまだ記憶に新しいリーマンショックが起きた。2010年卒の僕らは、先輩が内定取り消しや各企業が新卒採用を絞る、なくすなどの恐怖が急に降り注いだ代だと言っていい。

 そんな中で僕はといえば、その恐怖や不安が行動量になるようで、片っ端から企業のエントリーを行っていった。たまたま航空業界の総合職とパイロットの採用は同時にあったのでエントリーを行った。エントリーシートは合計で70を超える企業に送っていた。毎日毎日、手書きやPCで作成したエントリーシートを書いては、送付していたのがこの時である。

 その中でもパイロットの選考は早かった。ホームページから簡単なアンケートに答えると説明会を選べる仕組みになっていて、12月の説明選考会の予約を取った。エントリーシートを書いては、母親や人たちに見てもらい、書き直しなどを何度も何度も行った。しっかり準備をしたのにもかかわらず、朝になって証明写真を撮っていないことを気づき、あわてて、近くのスピード写真で写真を撮って、その場ではった。

 当時僕は関西に住んでいたと前述したが、場所は大阪の梅田でだった。自転車で最寄駅まで行き、大阪に着くころには、寝不足なんて消え去り、真新しいリクルートスーツで闊歩したのを今でも覚えている。

 会場についた僕は意気揚々とエレベーターで会場に向かう。受付の方に書類を渡し、中に入って驚愕した。大手飲料メーカーのCMが流れていたからだ。

「おかしい。なんでパイロットで飲料のCMなんて流し続けているんだ?」と。

疑問は徐々に確信に変わる。隣にいた子から「あなたもメーカー希望?」と聞かれたからだ。あわてた僕は、すぐに元の受付に帰り、さっき渡したエントリーシートを返してほしいと言った。完全に受付の方からは怪しい目をされたが、事情を説明するとすぐに笑顔になり、「一階下ですね」と言ってくれた。その場にいた方々からは、笑われ「パイロットがんばってね!」と声をかけられてあわててエレベーターに駆け込んだ。余談だが、僕はそれ以来、この会社のファンで、いまだに飲料品にまよったときはこだわってこの会社の商品を選んでいる。

 一階下に降りた僕は無事に会場入りを果たし、席に座った。驚いたのはざっと100名を超える学生がぎゅうぎゅうに座っていたからでもあり、その熱気とさっきまで女子もいた環境が男子だらけになった暑苦しさに圧倒された。

 いよいよ始まる。少しだけ鼓動が早くなったのは、あわててエレベーターから降りてきたか、会場を誤っていたか、それとも、夢に近づいているという実感か、いまだにあの時の答えは出ていないが、少なくとも、気持ちが高ぶっていた。それは言えた。






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