私の仕事上の趣味は、婚活記録をデータ化して分析をすることである。
エンターキーを小指でポンと勢い良くたたく。
「ああっ、やっぱり女子のほうが多いかぁー。」
と一人事務所でつぶやく。
今、何をしているのかというと、男性と女性のどちらがお見合いを断わる側になるのかを調べていたのだ。およそ、7対3の割合で、女性のほうが断わることが多い。
断わる理由の第1位は、「性格が合わないと思った」という誰でも予想できることなのだが、第2位が意外にも、「お見合いで割り勘をされた」なのだ。これが30%ぐらい。つまり、女性側が断わる理由の3組に1組が「割り勘された」と断っているのだ。
「『性格』はどうにもならないにしても『割り勘』は行為だからどうにかなりそうっ!」
と、希望の光が脳の中をキラキラと駆けめぐる。
さらにカタカタと調べてみると、割り勘をしている男性(以下、割り勘男)はだいたい決まって割り勘で断られ続けている。
「おおっ、これは割り勘をやめさせれば、婚活が決まるんじゃないかっ!コロンブスの卵以来の大発見かもしれない!!」
そこでお見合いが終わったばかりの割り勘男に連絡をとってみた。
「実は、先日のお見合いなのですが、割り勘が原因で断られています。」
ふっ、この続きは言わなくてもわかるだろうっ!と、思いきや意外な答えが返ってきた。
割り勘で断られ続けている男性「あの、どうして個別会計ではいけないのでしょうか。(しれっと割り勘という表現ではなくなっている)」
「えっ。(あ、あれ?良いかダメかって言われたら、ダメなことないよなぁ)」
「自分以外の飲食代を払わなければいけない理由ってなんでしょうか。」
「は、払わなければならない理由!!!!」
「自分が食べた分は自分で払うっていうのは当然のことですよね?」
ああーー、なさけないことに何も言い返すことが出来なかった。コロンブスの卵立たず。
しかし、一つ発見できた。
それは、割り勘男は割り勘(絶対に個別会計とはこちらは言わないぞ)をするのは合理的な選択で、女性におごる理由はないと思っていることだ。
そこで、この割り勘男の言い分を伝えた上で、割り勘NGの女性たちの考えを聞き取りをしてみることにした。
割り勘嫌い女性1「なにをーーーー!!!」
割り勘嫌い女性2「きぃぃぃ!!!」
といきなり怒りモード炸裂の反応だった。
「す、すみません。こんなことを聞いてしまってー!」
もうペコペコするしかない。
割り勘嫌い女性3「いいえ、大西さんに怒っているわけではありませんからっ!」
とはいっても、こ、怖い・・・。
割り勘嫌い女性「そりゃねっ、おごるっていうのは義務かっていえばそうじゃないですよ。 だからこそ、割り勘をしないっていうことが大事なんですっ!!!」
「義務じゃないから大事?どういうことですか?」
割り勘嫌い女性「おごるっていうことを積極的に選んでくれているから、大事にされている感じがするんですよね。」
な、なるほどーーー!!!!!
割り勘男は、義務じゃないことをやりたくないと思っている。
おごられたい女は、義務では無いが故に、おごるかどうかで大事にしてもらっているかどうかを判断しているのだ。
割り勘をする男性に、この話をした。
すると、意外な反応が返ってきた。
「こんな数百円で女性心理が変わるならば、飲食代ぐらい負担します」
とすんなり割り勘をやめてくれた。
現在、うちの結婚相談所ではほとんどの人が初回のお見合いで割り勘をしないようになった。(それでも頑固な人はやはり少しはいるが。)
割り勘をする人が少なくなるとともに、実際に結婚相談所でもお見合いが上手くいく確率が実際にあがっていった。
しかし1か月後転機が起こった。
元割り勘男性「飲食代って数百円って思っていましたが、デートが増えていくうちに結構お金がかかってきています。1,200円のランチを食べるにしても、2人だと2,400円ぐらいになっちゃいますし。」
元割り勘男性2「週に1回デートするとしたら、ランチだけで1万円かかる計算になりますよね。カフェ代も入れたら、結構かかってくるんですよねー。デートは飲食代以外にも色々ありますしねぇ。」
うかつだった。お見合いがうまく行けば解決と思っていたけれども、その後が問題だ。男性にとってはデートの費用が増えるのだ。今度は、男性が女性を見る目が厳しくなっていった。
元割り勘男性「お会計の時にお財布も出さないんですよね。」
元割り勘男性「ありがとうも言わずに、お店を出るんですよ。」
今度は、男性が女性を断り始めたのだ。
「ああああああ、割り勘問題が解決したと思ったら、今度はまた別の問題が出てきたー!!」
と、ブログでぼやいた。
すると翌日、1通のメールが届いた。うちのお客様で最近結婚した30代半ばの女性からだった。
後編に続く


