リアルな「ガウディ計画」の話 〜新入社員と大きな挫折編〜

前編: リアルな「ガウディ計画」の話 〜就職編〜
後編: リアルな「ガウディ計画」の話 〜新たな製品開発編〜

やっと本題の『リアルな「ガウディ計画」』の内容に入ります。まずは序章的な内容です。

 無事社会人として、また希望していた医療関係の技術職としての第一歩を踏み出したんですが、初めの3〜4ヶ月はそれまで作っていた試作品の作り方の学習、その試作品を使用するオペの知識や周辺機器に関する知識の習得に追われ、正直自分が開発しようとしている製品が一体どんなものなのかも全く判らずにいました。ちなみに私が事の重大性をしっかりと認識したのは、入社1年後に大きな失敗をした時になります。失敗をした話はおいおい書くことにして、入社直後のことをまず書きます。


 私が入社した会社での私の配属先は「研究開発室」。ただし、開発要員は社長(一応の責任者)、上司1名(ただし営業との兼務)、私(会社で初めての研究開発専属)の3名でしたが。

 開発する試作品は既に大枠の形状・スペックなどが決まっており、私の業務はこの試作品の性能評価とデータ化、さらに試作品の製造といったことが中心でまだまだ「丁稚状態」での作業ばかりでした。


 私の入社前に行われていた動物実験(完成した試作品を動物に使用して、実際に生きている状態での性の評価試験)で、そこそこ良好なデータが得られていたことから、入社後4ヶ月ほどした時に臨床実験を実施するかどうかを判断するための追加の動物実験を行うことになりました。ここで言葉の説明を少しします。臨床試験と臨床実験は似ているように感じるかもしれませんが大きく異なります。まず臨床実験ですが動物実験、装置を使用した評価試験などにおいて良好な結果が得られており、実際に人体に使用した際に何らかの副作用などが起こるかどうかを、ターゲットとしている症状に近い患者さんを選び使用することを言います。次に臨床試験ですが、臨床実験で良好な結果が得られ、副作用も認められない場合に、ターゲットとする患者さんの症状以外の方にも広く使用してみることを言います。ただ、臨床試験は多くの場合治験(厚生労働省から薬剤や医療器具の認可を得るために、多くの患者さんにいようしてみて性能の評価や副作用の発生の有無を確認する試験)を兼ねて実施されます。


 少し話が脱線しました。元に戻します。

 と言う訳で入社4ヶ月後に初めての動物実験に参加することになりました。今回使用するのは私が作成した試作品なので、緊張もあれば早くもこういった実験に参加できるということに少し天狗になっている面もありましたが。


 動物実験の結果ですが、、、期待していた結果は得られず、大きな課題を残すことになりました。

 実験が失敗した要因として

  ・以前使用していた動物は、試作品に対しての拒絶反応が低いと学会で問題視されるようになってきていたので、より人間の反応に近いという動物に変更したこと。

  ・使用している素材の強度劣化が予想以上に早くなっていたこと。(動物を変更したことに関わります)


以上2点が浮かび上がりました。

 そこで、動物を変更することはできないので、素材の変更、さらに素材変更後も以前の試作品の強度を維持できることが、新たな課題として浮かび上がりました。

 また形状原因で動物実験に失敗したというようなデータが見当たらなかったことから、形状は今まで通りの形状を採用することになりました。


 気分も新たに新しいプロジェクトが開始されることになります。今回のプロジェクトは、私が入社後から始まった取り組みなので私の気合いの入り方もかなりのものでした。

 まず新しい素材に選びに関してですが、実は私の入社前からある程度の話題には登っていたようで、すでにある程度の検討がなされていた様ため直ぐに決まりました。(というか決まっていたので私の出番は無しです)

 私に与えられた仕事は、その素材を使って以前の試作品と同等の強度を出すための微調整を行うことでした。何度も少しずつサイズが異なるものを作ってはいろいろな測定を実施して壊す、また作ってはいろいろな測定を実施して壊す、この繰り返しを行い新素材のベースとなるデータをまずは集めました。

 ある程度仕様が決まってきたある時、社長から悪魔のささやきが、、、。

社長
試作品の厚みをもう少し軽減できないか?そうすれば動物実験のデータがもっと良くなるのでは?

 この一言で全てやり直しです。また厚みをいろいろ変えながら試作品を作り、いろいろな測定を実施して壊す、を繰り返す生活の始まりです。


 社長からは

社長
厚みを減らすんであれば、プレスしてみたら?

確かにそうなんですが、、、そのプレスが簡単にできない形状なんですが、、、と思いつつ、実験室にある機材をいろいろ引っ掻き回して、なんとか使えそうなものを見つけ、試作品にプレスをかけてみました。結果ですが、、、明確な理由は分からなかったんですが、プレスをかけて若干厚みを減らすことで強度がかなり増すという事がわかりました。(これはその後材料力学の点から厚みげ軽減することで強度が増した理由は判明しました)


 厚みは薄くしても強度は増すという事が分かり、次の試作品はプレス加工品を採用することになりました。ただし、確かに強度は増しているんですが、プレスをすることで一部試作品に不具合が生じており、それが実際に使用した際にどのような影響を及ぼすか分からない状態でした。(その予想される不具合を試す実験装置がない(というか作れない)ため、実際に動物実験で使用するしか方法がなかったんです)

社長、プレス加工すること厚みが減って、強度を増すことはできましたが、***の部分が問題になると思うんですが?
社長
サンプル見してみろ
これが今回の試作品です。この部分なんですが。
社長
確かに崩れているな、、、しかし、この部分がどれだけ影響するか実施に使ってみないと分からない。
動物実験を行おう。

ということで、新しい試作品での私にとって2度目の動物実験が決まりました。

 動物実験の実施は1年目の終わり、次の新入社員が入社しようかという3月末に実施されました。

 結果は、今までの中で一番最悪の結果でした。

 準備した動物15頭のうち、10頭ほどが試作品インプラント手術中もしくはインプラント手術後に死亡、共同開発を行っていた病院の先生からも

お医者さん
今回の実験は今までで一番悪い結果。素材を変えた影響なのか構造的な問題なのか、この開発自体の案自体がダメだったのかを判断する必要がある。

と、かなり厳しいご意見を頂きました。


 入社1年目がやっと終わろうとするくらいの新米研究開発員にとっては、目の前が真っ暗になるような出来事でした。しかも今回の試作品は全て私が製作したもの、さらに言うと構造的にもしかしたら問題になるかも、、、という懸念事項を抱えたまま行った実験、、、。社長からは

社長
最終的に動物実験のGoサインを出したのは僕なんだから、君が責任を感じることはない。

とは言われましたが、「問題が起こるかも」と考えていたのは事実です。責任が全くないわけでもないと思います。

 しかもこの開発自体を「止めよう」とも取れる意見を共同開発者のお医者さんからも言われる始末。

 自分は技術屋としての能力がないのでは、、、。

 と失意のどん底にある状態で、私の社会人2年目がスタートしました。

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リアルな「ガウディ計画」の話 〜新たな製品開発編〜

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