現在28歳でアメリカでプロゴルファーを目指している私ができあがるまで。 (大学時代 –体育会下級生)
初めての合宿
※これまでのお話:海外の高校を卒業して帰国し、鼻息も荒く入部した体育会ゴルフ部。ビビっていたものの、そこは頑張るお嬢様達の花園だった。
最初は、女子の先輩達の中に混ざってゴルフをするのがとにかく新鮮でした。
まず、飛距離で置いていかれることがない。
ラウンド中、恋愛話やら最近の映画やらの談話がある。
「ナイスショットでーす!」「ナイスパットでーす!」と黄色い声が飛ぶ。
でも、一番困ったのは多分「女子か男子か」という問題ではなく、「アメリカのクラブアクティビティと日本の体育会との文化の差」だったと思います。
うちの大学のゴルフ部は、男子は典型的体育会といった感じで、
先輩が絶対。後輩がヘマしたら丸坊主。無制限坂ダッシュとか、ジョッキ一気飲み競争とか、理不尽なこと雨あられでした。
一方女子は、正直「体育会としての尊厳を取り戻す」といった発展途上感がありました。
どういうことかというと、私が入部する前は部員不足で、初心者も多く、
士気の低下があり、当時下級生だったの現主将たちの代が試行錯誤して立て直してきた経緯がありました。
もちろん代によってカラーは異なりますから、強くて厳しい時代もあったはずです。
でも学校の部活というのは毎年人が入れ替わるものなので、2007年当時は変革期だったのでしょう。
つまり、折角縦社会の伝統ある雰囲気が戻りつつあった組織に、海外から来て「なんで一年生が掃除しなきゃいけないんですか」と爆弾発言をするような生徒は、要注意人物でした。(もちろん私の事です)
先にも、私は「ゴルフは好きだけど内容は考えていなかった」と自身を評価しましたが、
「自分がゴルフをすること」以外のことを考えていなかったわけです。
また、カルチャーギャップを感じたことのひとつに、敬語があります。
お嬢様達の体育会は、ゴルフの内容やトレーニング内容はたくましく発展途上でしたが、
偉大なる監督のもと、マナーや言葉遣いは徹底していました。
例えば、
・一人称は「私(わたくし)」
・昨日は「さくじつ」、今日は「本日(ほんじつ)」明日は「みょうにち」
省略言葉はNG。
・「コンビニ」→「コンビニエンスストア」
・「エアコン」→「エアーコンディショナー」もしくは「空調機器」
下品な(と監督が判断した)言葉はNG。
・「チーピン」(打ってすぐに左に曲がってしまう球)
・「マン振り」(満身の力を込めてスイングすること)
例文:「先輩、みょうにちのゴルフをご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
例文:「本日はアドバイスをいただいてありがとうございました。今度もご指導のほど、宜しくお願い致します」
合宿中の先輩の愛のある指導は、ただの命令と小言にしか聞こえず、我慢の連続でした。

(でも私のボールの方が先輩よりも飛んでるし)

(でもあの先輩 明らかにカップに近いし、次に打つの私の番だし)

(だってあの先輩、私が取り掛かる前に 勝手にやっちゃうんだもん)
…私は親に怒られた事がありませんでした。
教師にも怒られるような事をしてきませんでした。
納得のいかないことを言われたら理路整然と、そして徹底して言い返してきたのです。(←問題児)
そんな私が、なんでも「ハイ」と言い、
ハラワタが煮えくり返りながらも「すいません」と言う事は、
本当に修業でした。
追い討ちをかけるように

と注意を受けた時には、思わず拳が飛びそうでした。
体制や習慣に対する反感はあったものの、先輩たちやゴルフが本当に好きだったので、辞める気はさらさらありませんでした。
でも入部後の合宿は朝から晩まで、先輩に怒られるんじゃないか、先輩の機嫌を損ねてはいないか、という緊張状態の中のラウンドはメタメタでした。
とうとうミスショットをした時、もう我慢できない!と思って、クラブを投げました。
それを先輩に厳しく叱られる。
またミスパットをした時、クラブを投げてはいけない、けど我慢できない!と思い、今度は帽子を叩きつけました。
それもまた更に厳しく叱られる。
次にミスショットをした時、また体中に渦巻く怒りの感情。
でも表に出してはいけないと必死に耐えて、押し黙って、涙しました。
それは組の雰囲気を乱すから止めなさい、と呆れられる。
今振り返ると本当にバカみたいな笑い話ですが、壮絶な合宿でした。
自分なりのパラダイムシフトです。(笑)
もちろん優しい先輩もいました。というか皆さんもちろん根は優しいのですが、指導されている側からしたらそんな事を思える余裕もなく、アメ役の先輩に甘え、ムチ役の先輩にはとことん警戒しました。
先輩の苦労を知るのは、自分がその立場になる1年後、2年後、3年後となりました。
いや〜愚かでしたね。(笑)
そしてそれ以来、礼と伝統を重んじるゴルファーへと少しずつ成長していくのでした…
※当時の先輩達には本当に迷惑をかけました。
改めてここにお詫びと感謝を申し上げます。
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