A story of Recruitment2 「50才で亡くなるのは短命か、長生きか?」
よくよく考えてみれば、なぜこんな先輩がモテているのだろう?
身長だって自分より低いし、髪型だってコボちゃんがそのまま大人になったような
刈り上げ方をしている。おまけに服装は仕事場からそのまま着てきたワークジャケットで、
いつかの宮崎県知事を思い出す。
「あのな、俺がなんでモテてるかわかるか?」
この人、読心術ができるのだろうか?
「え、そ、それは・・・やっぱりカッコいいからですか?」
「お前はいつも不安な時に鼻の穴がピクピクするな・・・。
いや、俺はカッコよくない。そんなことはわかっている。
俺のあだ名が小学校から”じゃがいも”と呼ばれてきたことから簡単に想像がつく。」
「だったら何でなんですか?」
「例えば、キムタクと似ても似つかない不細工な芸人が、綺麗な女優と結婚したりするよな。」
「確かに。」
「もっと言えば、昔は、高学歴、高収入、高身長の”3高”と呼ばれる人たちがもてはやされた。」
「聞いたことあります。」
「じゃあ、今はどうだ?持ててるヤツ・人気のあるヤツは”3高”か?」
確かに言われて考えてみれば、低学歴、低収入、低身長でもモテている人はもてているような
気がする。妻には申し訳ないが、自分だってどこにも当てはまらない。
「話しは変わるが、俺が50歳で死んだらどう思う?」
「そんな若く死ぬんですか?」
「例えば、だ!俺は生き抜く!ただし、今”若く死ぬ”って言っただろ?」
「はい・・・。」
「じゃあ、例えば平安時代だったらどうだ?きっと”長生きしましたね”って言われるぞ。」
「・・・。」
気がつけば、ビールを飲もうと思ってあげた手を口に運ぶこともなく、おろすこともなく、数秒間静止していた。
今の価値観では短命でも、昔の価値観では長生きになる。
だんだん先輩が何を言いたいのかわかってきた。
「お前、採用の仕事がうまくいかないのが、知名度や給料や人気だと言ってたろ?」
「はい・・・。あ!もしかして!!」
「うちなんかも知名度もないし、給料安いし、下手すりゃ休日だってないぞ?
ブロック専門だから”有限会社ブロック”っていう社名なのに、最近はブラックカンパニーって呼ばれてるんだぞ!」
呼んでいるのが自分だとは口が裂けても言えない。
「働き手はな、昔は給料・知名度・休日が職業を選ぶ際のベスト3だったんだ。
ところが、それは戦後からバブルまでの話し。昔は焼け野原で食べるのがやっとだったんだ。
まかないがついていると言えば、いや、それを言わなくとも食べるために自分たちのおじいさんやおばあさんが
必死で働いてくれたんだ。」
先日亡くなった自分の祖母を思い出して、胸がギュッとなる。
「その方たちのおかげで日本は豊かになった。今では下手すりゃフリーターでも食べていけるよ。
豊かになったおかげで、まかないがついていても人は振り向かなくなってきたんだ。」
価値観が変わった。昔の価値観とは違う・・・。
今の人の価値観とはどんなものなんだろう?
鼻がピクピクしてきていた。
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