ど素人 高田支配人の 現場改革 2 飛び込む勇気
・自分本位の思いの塊
~分析をやめ飛び込む勇気を持つ
人はあまりにも落ち込むと、今まで気軽に相談していた人にも声をかけなくなり、一人でいろいろと思いあぐねるようになるものらしい。このときの高田もそうだった。
このことを見越したかのように、次の日 アンビシャスのA副社長から電話がかかってきた。
「どうだ、もう準備は出来たか?」
「それが、、、、とてもそういう状態ではありません」
この答えを予想していたかのように電話の向こうで、A副社長が独り言のようにつぶやいた。
「お前は頭が良すぎるんだよ、分析ばかりして」
「え?どういうことですか。」
「昨日 あっちこっち見てきて それで よーし がんばろう!となったのか、と言ってるんだよ。たぶん逆になってるだろう、お前の場合は。」
「、、、、、」
「お前は 自分の立場しか考えていないから落ち込むんだよ。こんな難しいところに放り込まれて 失敗したらどうしよう、と。」
「経験も実力もないのを承知でそこに向かわせたこちらの思いなんか 少しも感じてないらしいな。情けない、、」
「その大変な式場で15年以上がんばってきたおばさんたちは すごい人たちだと思わないのか。」
「あんたの自己成長の場として選んだんだよ。教えようなんて思うなよ。あんたの勉強だよ、自己成長という。」
いつもはざっくばらんで親しみやすいA副社長だったが、このときの指導はさすがに高田の心に突き刺さった。
今までの経験だけで考えると 人を指導する位置に立つというのは、社員より優れた能力が必要であり、経験も上で、常に相手より上の立場で無いといけないのではないかという一種の考え方の癖が、高田の中に自己中心的な分析癖を生むことにつながっていた。
「それでは、この式場の現場の社員の方々は、これから赴任する私に何を期待し、何を求めているのでしょうか?」
「お前が元気で輝いていることだよ。」
「え?、、、、」
「頭で考え理解しようと思っているうちは、言っておくけれど、嫌われ続けるぞ、
飛び込め、考えている暇があったら、現場で一緒に汗を流して 現場の声を聞き続けるんだ。」
確信のこもった指導を受けながら 高田は昨日まで心の中でもやもやしていた雲がどんどん晴れてゆくのを感じていた。
「今は良く分かりませんが、とにかく 明日から、その通りやってみます」
こうして いよいよB式場へ出社の日がきた。前もって何か考えたり準備したりせず、
とにかくこの日 ただ元気よく過ごそうとだけ高田は決意していた。
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