文系女子がドイツでリケジョになってみる ―人文系は貴族編

前話: 文系女子がドイツでリケジョになってみる ―魅惑の奨学金編

ドイツの人文系は2種類の貴族のためのも!?

この国には2種類の貴族がいる。1種類は苗字に「von(フォン)」とか「zu(ツー)」がつき、お城を所有する貴族で、もう一種類は生活保護貴族である。

ドイツの生活保護は至れり尽くせりで、生活保護受給者達は時々サラリーマンに嫌味を言われる以外は何不自由ない貴族のような暮らしができる。BMWやベンツに乗ったり、海外旅行を楽しんだり、生活費を稼ぐためのもろもろのことに悩まされず、優雅な生活を送れる。

多くのドイツ人は、内心時々彼らをうらやましく思っている。

もちろん、難民が大量にやって来たこれから、(生活保護)貴族達の生活も脅かされるかもしれないが、これまでずっと彼らが優雅に暮らしていけたの自体すごいことだと思う。

ドイツで人文系―哲学、美術史、社会学などを勉強すると、多くの場合2種類目の貴族になる。もちろん、時々そういった学部には本物の貴族も紛れているそうだ。例えば、美術史学を勉強し、家宝の美術品を元手にしてギャラリストとなり、さらに資産を増やす本物の貴族もいるが、たいていの場合はもう1種類の貴族になる。

もちろん、本物の貴族などあまりいない。

知り合いの歴史学修士の(生活保護)貴族はwikipediaの編集をして過ごしているし、しばらくやっていた貴族をやめてウェイトレスになる中国哲学博士もいる。

もちろん、貴族にならず、学校で哲学や歴史を教えるといった人文系卒もいるが、割合的には半々といった感じに見える。


卒業学部と職業が直結する不都合と合理性

日本でも人文学部の廃止を訴える話も出てきたが、たしかに人文学系統のことは金を稼ぐのに役に立たない。しかし、日本では東大で哲学をやっていた人などは、底辺大学で職業に直結した学部を出た人より良い職を得るだろう。

他にも、日本では生物学をやった人がプログラマーになったりすることもあるが、ドイツでは絶対にありえない。それでも、ドイツに人文学部がありそこに多くの入学者がいるのは確かに謎である。

もちろん、やりたいことをやるのは重要なことだし、人文学部卒の学生で就職できなかったために、大学を入りなおして弁護士とかの文系で就職に有利なことをやる人も多い。

ドイツの仕組みは合理的といえば合理的なのだが、融通が利かないともいえる。

18歳とかで将来やりたい仕事がはっきり分かる人などいるのだろうか。もちろん、やりたい仕事をやっている人ばかりではない。だから、就職に有利な学部の中から関心のあるものを選ぶという人がいる。

なんというか、私が日本で大学に入りたてのころの幼い感覚から見ると、大人びて見えてしまう。

むしろ、時々文系の学生に合うと、彼らののほほんとした日本人大学生のようなオーラに癒されることもある。そういう彼らも工学などの就職に有利な学生と合うと、多少引け目を感じているのを目にする。見たくない現実を垣間見てしまった、と。



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