アリゾナの空は青かった【14】恐怖のグレイハウンド・バスPt.2
同じアリゾナ州と言えども、フラッグスタッフは標高2300mとあって、ツーソンとは俄然気候が違う。
翌朝目が覚めると、宿泊した屋内ではガンガンストーブを焚いており、外はうっすら雪化粧。近くの小さなスタンドカフェに入って、わたしたちは軽くブランチ(朝食兼昼食)を終え、さて、ハイウェイへと向かってトム君が車を走らせていると、後ろからゆっくり、スゥーっとパトカーが来、ピタッと横付けした。
えぇ?と思っていると、トム君が運転席に座ったまま制服姿の警官と一言二言話して、免許証を見せる。
「雪が車の屋根に少し積もってるし、道にも気をつけて、だそうだ」
何事もなかったようで、わたしたちは、後は市街を抜けてツーソンへ一路まっしぐら。しばらくハイウェイを突っ走っていたら、バックミラーにパトカーが走って来るのが見えた・・・しかも、かなりのスピードですある。
「あれ?。まさか、この車を追っかけて来てるわけじゃありませんよね?」
「なんで。だって別に悪いこと何もしてないよ」
「そうだよね・・・だけど、他にこのルートを走ってる車、ありませんですが・・・」
ふと、嫌な予感が・・・した。
するとですよ、後ろからパトカーがなんか叫んでるのが聞こえてきた!
「フリーズ!その車、止まれぇー!」
映画ならこうなるとこだろうか。 「フリーズ」とはアメリカの警官語で「動くな!止まれ!」である。アクション映画でよく耳にする言葉だ。
こちらの車は走ってる訳でして、実際にあちらさんが、なんとガナッってるのかわたくしは存じませんでしたが、かなりヤバイことが起こりつつあるのは、いくらドンくさいわたしでも、雰囲気から分かりましたです。運転していたトム君も、「な、なにがやの?」と訳が分からない顔で、しかし、即座に停車。
二人の警官がこちらへやって来て、トム君、車外にでるよう促されました。見ると、先ほどフラグスタッフの町で、「雪道だから気をつけて行きなさいよ。」と声をかけてくれた二人ではないか。あれはこちらを心配して注意してくれたのではなくて、車のナンバーからよそ者とわかって、それで様子を見がてら、と言うことだったのでしょ・・・
トム君と警官とのやりとりがしばらく外で続いていたと思ったら、ありゃ?ト、トム君^^;て、手錠なんかかけられてます~~~????警官の一人が助手席に座ったままのわたしのところに来て、
「彼が君と話したいと言ってるよ。」 い、いったいこれはどういうことなの?
トムの説明はこうでした。
フェニックスの大学にいたとき、交通違反で罰金を科された。しかし、アメリカの学生にはよくあることだが、しょっちゅう住居を移動したので、その通知が届かなくなり、罰金未納が重なってドンドン増えて行き、結局「Wanted」で、警察のコンピューター検索にひっかかったとのこと。1000ドルを払ったらすぐ釈放て・・・^^;
その1000ドル、「持ってますけど、持ってまへん~~~」
ごめんよ、トム君。1000ドルが例え君を今救うとは分かっていても、これを使うことは、できない。なぜなら、わたしは学生ビザで滞在していて、この留学のために数年アサヒビアハウスの歌姫バイトをして貯めたキチキチの預金なのだ。アメリカで働かなくても学業ができるという証拠として、預金残高表を求められたら常に出せる状態でいなければならない、しがない貧乏留学生なのではあった。
許しておくんなさい。ちなみに、当時のツーソンでのわたしの生活費は月に300ドルだった。
友人トムを非情にもフラッグスタッフの留置場に見捨てて、わたしはひとり、グレイハウンドバスでツーソンに引き返すことになったのである。なんでも経験してみるものだとは言うものの、こんな経験は果たしてしてみていいものかどうか。おすすめできるものではありまへん・・・
まだまだ続くこの恐怖・・・
著者のSodebayashi Costa Santos Yukoさんに人生相談を申込む
著者のSodebayashi Costa Santos Yukoさんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます