アリゾナの空は青かった【17】下宿屋ケンタッキー・イン

前話: アリゾナの空は青かった【16】North 2nd Ave.927番地を後にして
次話: アリゾナの空は青かった【18】University Blvd. 504の冷蔵庫泥棒

さすが紳士の国のイギリス人。
ギクシャクしていた仲とは言え、わたしが引っ越し先を探すとなると、内心はどう思ってか知りませんが、我が友ロブは、少なくとも表面は何気ない顔で、あちこち一緒に行動してくれた。

まず、大学構内にある学生の情報交換場である掲示板でめぼしをつけた。ここへ行くと、いろんな情報が貼ってある。
「ルームメイト求む。月々○○ドル負担」
「当方女性。同性のルームメイト求む。個室あり。光熱費共同負担」と言った具合です。

「ふむ。どれどれ、ここなんか値段もそんなに高くないし、大学からも、これまで住んだ927番地からも近い。それに女の子募集とあるぞ。よし、とりあえずここをあたってみよう。」ということでロブと連れだって下見にでかけた一軒家。

呼び鈴を押すと、あれ?ドアを開けて出て来たのは若い男であった。だって、女の子募集とあったぞ・・・おかしいなと思いながらもとりあえず、案内されたリビングに入った。

早速ハウスシェアリングの話を聞いてみると、なぬ?寝室は一部屋しかない?あたしはどこで寝るのよ?あんたはリビングのソファで寝て、わたしはその一部屋のベッドだって?冗談じゃないぜ。なんだそりゃ。危ないったらありゃしない。そんなんなら最初から掲示板に「当方、若い男だが女性求む」と書いてくれぃ!考えさせておくんなさい、とその場をそそくさと出た。

その家を後にして歩きながらロブいわく、「Hey、Yuko、あそこ、止めといた方がいい。あの家に庭があったけど、ぜったい2、3人の女の死体が埋まってるぞ。」なんて、ニタニタしながら言うのである。それこそ止めてよね、ロブ。

そう言いながら歩いて目に付いたUniversity Boulevardの一枚の看板。「Boulevard」はフランス語を語源とし、ブールヴァールと読むようだが、アメリカ英語では「ブールヴァード」だ。街路樹が側道が整えられた大通りを言う。 「空き部屋あり」と書いてある。「あそこを見てみよう」とロブと二人ドアと叩いてみたら、案内してくれたのは、そこの下宿人の一人、男子学生だった。

部屋は個室だ。よろしい。台所トイレは共同。うん。これもよろしい。しかし、シャワールームを見てびびった。西部劇の酒場の玄関の両開き扉、あるでしょ?客が出入りするたびに、前後にバタンバタンと開き閉めするちっちゃいの。あれなんですよ。あれがシャワールームのドアで、それが6つくらい並んでる。下手すると、いや、下手しなくたって見えるじゃん!男ならまだしも、いつ、誰がシャワーを浴びに入ってくるか分からない。そんな中じゃ、オチオチとシャワーも浴びていられない。け、けっこうでございますと、これもそそくさと退去した。

そうして入った同じ通りの数軒向こう、3度目の正直の「空き室あり」。丁度いい具合に、おばさんが掃除をしていた。聞くと彼女がこの下宿屋の持ち主で、メキシコからの移民なのだそうだ。この一軒家を手に入れ、現在は下宿屋にしているとのこと。

下宿人は12人おり、あと二部屋空き室がある。入っているのはみなアリゾナ大学の男子学生。個室にはベッドと机があり、バスルームも上階下階と2つずつ、全部で4つある。もちろん、アメリカの一般家庭ならどこででも見かける普通のバスルームである。台所もかなり広い。自炊はもちろん自由だ。ちょっと高いと思ったが、よし!ここに、と決めた。

Kentucky-Inn
ケンタッキー・インの正面玄関

こうして移った下宿屋は、その名も「ケンタッキー・イン」。わたしは、そこの13人目の下宿人で、たった一人の女子であった。

 

 
月100ドルだった二階の我が部屋。音楽がない住まいは寂しいのでギターはツーソン到着間もなく手に入れた。

続きのストーリーはこちら!

アリゾナの空は青かった【18】University Blvd. 504の冷蔵庫泥棒

著者のSodebayashi Costa Santos Yukoさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。