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16/3/17

落ち葉を見て「死」を悟ることで、死の問題が解決した話 第3回

Image by Olia Gozha

骨髄移植の提案


 ひと月も治療すると、血液中のがん細胞はきれいになくなりました。しこりも消えて、首は元どおりになりました。主治医との会話のなかに、退院の言葉が聞こえはじめると、急に目の前がひらけたような気がしました。すべてが順調に回復する、そのような予感に包まれました。しかし、良いのは束の間で「骨髄移植をしようかと考えている」と言われると、局面は一変しました。

思いがけない言葉に驚いて質問すると、病気が良くなったのは一時的なものであり、完治させるには骨髄移植が必要ということでした。そして、状態が良いときに受けたほうが成功率が高いので、このタイミングで話を切り出されたのです。完治したと思っていたのは、私のはやとちりだったのです。

移植の成功率を聞いて「低い!」と感じました。失敗は生命の危機に直結しますので、そのショックは私の記憶に刻まれました。それが何度も何度も再生されるうちに、いつの間にか失敗するとしか思えなくなってしまいました。その後、主治医から何度か意志を尋ねられましたが、前向きな返事はできませんでした。しかし、決心できないからといって、移植しなくても良いわけではありません。生きるためには受けるしかないのです。しかも、タイムリミットはそこまで迫っているかもしれません。いつまでも悩んでいられないのです。

移植の提案によって、自分のおかれた状況の厳しさを改めて理解しました。私の前には、明るい未来ではなく、険しい山がそびえているのです。しかも、ふもとには大きなヘビが横たわっているのです。そのヘビを飛び越えなければ、山に足をかけることすらできないのです。しかし、一世一代の大ジャンプのための助走に入るには、死の問題の解決が必要だったのです。その答えを胸にしなければ、足がすくんで走りだせないのです。



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