無宗教で死の問題を解決する方法の性質について 第4回

前編: 無宗教で死の問題を解決する方法の性質について 第3回
後編: 無宗教で死の問題を解決する方法の性質について 第5回

一乗滝



最終日。ホテルから一乗滝に向かいました。そこは佐々木小次郎が「つばめ返し」を会得した地として知られています。漫画家の井上雄彦氏の『バガボンド』のファンとしては、福井に来れば訪れてみたい場所です。

山あいを走り、近くの駐車場に車をとめると、さっそく水の流れる音が聞こえてきました。立ち入りの許される所まで歩いて行って、一乗滝を眺めました。

高いところの水が、低いところへ落ちる。滝つぼからあふれた水が、自然にできた地形にそって流れていく。その様をじっと見ていると、発売されたばかりの『バガボンド35巻』のことを思い出しました。


一乗さがり松での死闘の後、宮本武蔵には天下無双の声がきこえはじめました。しかし、それで満足しない武蔵はさらなる高みを目指して、武者修行の旅をつづけるのでした。その途中、近くを通りかかった縁で、ある少年の畑仕事を手伝うことになりました。

鍬をふりあげて精力的に耕したのですが、雨になれば川の水があふれて畑を流してしまいました。修復するも、雨のたびに畑は流されてしまいました。人間相手なら百戦錬磨でも自然相手では苦戦をしいられたのでした。

ある日、水路によって水の流れをコントロールすることを思いつくと、急いで地面を掘って水路を築きました。しかし、次の雨で水路は決壊し、ふたたび畑は流されてしまいました。


どうすれば水をコントロールできるのか


農業に不向きな土地に畑をつくるために、武蔵は思索をつづけました。そして、あるとき、川の流れから水の性質に気づいたのでした。


急な勾配

狭い川幅

速く鋭い流れ

地形によって外からの力によって

水のありようは完全に決められている

水自身はただそれに従っている

外からの力によって

ありようは完全に決められ

それでも水は水

どこまでも水

完全に自由


 水は、受け身を本分とします。そのため、水のありようはその場の環境、その場の力に従うのみです。地形の溝が広ければ川幅は広がり、狭ければ狭まります。地形のこう配が急であれば流れは速く、ゆるやかであればゆっくりです。水は常に受身であるが故に、ありようは完全に決められています。しかし、常に受身であるが故に、水はどのようにでも変化できるのです。

 武蔵は、水がそのままで自由であることに気づいたのなら、同時にそれを損なわせる原因にも気づいたはずです。言い換えれば、水を不自由にさせるものは何か。そして、ふたたび束縛から解放し自由にするものは何かということです。

 二度と同じ形にならなくても、一乗滝は一乗滝。その流れの前にたたずんでいると、このようなことが連想されました。


② 

 がんを告知されると、自然と死を思います。しかし、告知される前は、自然には死を思いません。

 この事実を別の角度から見ると、私の中の「なにか」が告知という外からの力に従った結果、死を思ったと考えることができそうです。そのため、外からの力が病気の告知でなければ、今度はそれに従って、別の形として表れるでしょう。そのような「なにか」のありようは、まるで水のようです。

 私の闘病は、大学を卒業して社会人になり、新しい仕事もようやくこなせるようになった頃、体の異変に気づいたことで始まりました。それはゆるやかな地形の前に突然あらわれた急こう配です。おだやかな水の流れは一挙に加速しました。前方にみえる山は骨髄移植です。ふもとではヘビがとぐろを巻いています。私の中の「なにか」はその地形に従って、流れの複雑さはジェットコースターのようです。

 そのような状況で、死の問題を解決しようと「なにか」に従った結果つかんだものが東京行きの新幹線のチケットでした。

のぞみ号の車内では、今自分が東京に向かっていることを正しいと評価しています。それは自分の「真実」と行動が一致していると感じたということです。そして、自分と比べて他の乗客のを正しくないと評価しています。そのような彼らの行動とは「大阪に出張した東京のサラリーマンが帰宅のために東京行きの新幹線に乗っている」や「隣の席のサラリーマンが食事時に食事をする」など、特別なことではない、当たり前の日常の出来事です。それを正しくないと感じたということなのです。


 この場面を掘り下げる切り口は4つあります。

 1.私を東京に向かわせた行動原理が「なにか」にあるのではないか。

 2.「なにか」とは何か。

 3.「真実」とは比喩です。そして「真実」と「なにか」は近い関係にあるはずです。乗

   り合わせた人の行動がなぜ真実とズレていると感じたのか。

 4.「なにか」の本分は水と同じです。告知という外からの力に従って死を思うのなら、

そこから生じた死の問題を解決しようとすることは、「なにか」の本分を損なうのか。

それとも保てるのか。

 ということになりますが、以上は未解決です。



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無宗教で死の問題を解決する方法の性質について 第5回

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