金融バブルの星屑 その4 その軌跡 一

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メインバンクでお世話になった次長と担当者。共に海外支店へと転勤。準メインの信託銀行の担当者も。

かつては銀行では海外支店はエリートへの路の一つであった。

海外支店も経験して次は本店または主要支店の役職と出世していったものであった。

ところが海外支店の閉鎖が相次いだ結果、海外はマイナーへ。

いつしか日本に戻らずに他の国へ異動する「外外異動」なるものが増えていった。


非常にお世話になった次長は、その後、中国ブームの流れに乗り中国代表の役員に。

銀行を退職した後は、社長がその銀行出身の一部上場企業へ役員で転出。

今は副社長を務められている。

この次長とコンビだった担当者は長い間、ニューヨク、欧州に滞在していたが現在は本部で部長職を務めてられる。

人間性に優れた人は成功するという好例だ。


一方、その後の東大卒、元MOF担の担当者。

銀行が買収した消費者金融会社に幹部として長い間派遣されていた。その処理が終わると銀行に戻り支店長を務めていたが最近グループ会社の役員として出向。恐らくもう銀行に帰って来ることは無いのでは。本人は銀行で役員位までは、、、と思っていたであろう。


長信銀第1位の担当者は先に書いた様に実家の家業を継ぐ為に退職。

大阪である事もあり長らくその名前を聞く事も、何をしているのかも全く分からなかった。

ところが最近ふとしたところで名前を発見してビックリ。

それは某法科大学院の卒業生の体験談。

それによると、彼は実家に戻ってから「家業」を立て直し近代的な「企業」に変更、事実上の「起業」だったらしい。

その後、40歳の時に次の人生を築こうと法科大学院に入学。元々頭は図抜けて良いのであろう。3年で修了すると共に新司法試験に合格、弁護士となっていた。


その後の担当者は銀行の仲間達と起業をする為に退職。銀行名への愛着が高かった為に起業した会社名を「IBJ」と、同行の英文での銀行名のイニシャルにした。

我が国の晩婚化、少子化を憂い、ウェブを活用した「結婚相手紹介サービス」を開始。

「IBJ」の信用力と自身のアイデアを生かして見る間に急成長。

遂には東証第一部の会社の社長へと登りつめた。

一緒に仕事をしていた頃と同じ「笑顔」をテレビ、雑誌等で見ると嬉しくなってくる。


一方で破綻認定された長信銀第2位の皆さんは大変な苦労をされていた。

次長以上は、「何とか自力で仕事を探して下さい。」という事だったらしく、弊社担当の次長も、

「税理士の資格を持っていたので親戚の税理士事務所で働く事にしました。」と、退職のご挨拶に見えられた。


担当者は悩んだ末に「マッキンゼー」に転職。外資系コンサルタント会社である。

京大を出ていてUCバークレーでMBAを取得しているので経歴的には遜色無いと思われるが、転職して直ぐに話す機会があって、

「どうですか、仕事には慣れましたか?」と、伺ったところ、

「会社がお金を払って提案を受けるというのは並大抵でない期待をしているんであって。

プレゼンで依頼主の会社の社長に、『こんな内容じゃ金は払えない。出直して来い。』と、言われることもあります。そんな場合、金曜にプレゼンで翌週月曜の朝一番で作り直した物を提出しなければならないので週末は徹夜何ていうのはしょっちゅうです。」

兎に角、体に気をつけて下さいと言う以外に出来ることは有りませんでした。

しかし一緒に仕事をしたり飲みに行っていた時に感じていた、彼の頭が良いだけで無い、「熱い想い」はきっとコンサルタントの世界でも成功に導くはずだと信じていました。

私も海外赴任、その後の外資系企業への転職で音信は途絶えていたが、きっと彼はまだマッキンゼーで働いているんだろうなと思ってマッキンゼーのウェブを見たら彼の名前が消えていた。

暫く、そんな状態が続いていたのであるが、ある日、思いがけないところで彼の名前を目にした。

「ファーストリテイリング グループ上席執行役員CFO」

あの「ユニクロ」で財務責任者を務めていた。

この会社、コンサルを中心に執行役員を沢山採用。しかし多くは1年間か、長くとも2年で去っていくことで有名な会社だ。

そこで調べてみると既に5年も勤めている。驚くべきことである。

株主説明会での様子をウェブで見ると、よく知った彼が年齢なりに少し恰幅が良くなって説明をしている。話しぶりは昔と変わらず、明るくそれでいて自身に満ちていて、聞くものに安心感を与える感じだ。戦友に出会ったかの感で本当に嬉しかった。



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