就活で全滅した元偏差値38の男が世界ランキング8位の大学院に合格するまで
「さあ、いよいよ残り一人になったぞ。」
とにかく何とかしようと思って、ネット上でES添削をしている人にメールを打って直接会ってもらい、書類を添削してもらったことがある。
俺にもわからない。
数千件もの添削経験がある人にも分からないのに自分に分かるはずがない。そう思ってさらに絶望した。
やったこととしてはこんなこともあった。
採用を続けている企業に片っ端から志望を出していたので、運よく書類選考を通過しても事業内容がさっぱりわからない会社もあった。HPを見ても具体的にしているのかわからない。
しかし、志望動機は何とかしてひねり出さなければ面接通過はできない。
考えても、考えても結局思い浮かばず、
思い余って会社まで行き、出てきた社員に
むしろ、いきなり頼むなんて失礼じゃないですか?
当たり前だと思う。
どこの馬の骨ともわからない若造がエレベータの中で突然話しかけてきたら誰でも警戒する。
面接の練習も相当こなした。絶対にミスがないように万全の準備をして面接に臨んだ。
しかし、次の面接に進むことはできなかった。
当時は分からなかったけど、今ならその答えがわかる。
面接会場が「自分の思いをぶつける場所」ではなく「覚えてきたことを言う場所」になってしまっていた。絶対に落ちたくないがために面接の練習をしすぎて、言うことを全て覚えてしまっていた。
そこには感情がこもっておらず、面接官にもそれが見抜かれ「本当のことを言っていない」と判断されたのだろう。
就活の話題が消える
いよいよ、持ち駒が少なくってきた。
しかし、内定が一社からも出ていない状況から抜け出すことはできなかった。
「内定が出ない」と自分から言ったことはなかったが、みんな雰囲気で分かっていたのだろう。私の前では就職活動の話はしなくなっていた。
時期はもう夏休み直前。話題の中心は就活ではなく、学生生活最後の夏休みはどこに行くか、どうやって遊ぶかなどに切り替わっていた。
自分がどれだけ劣等人間であるかは十分すぎるほど分かっていたので、大学の構内では人通りが少ない道を通り、犯罪者のように身を小さくして人と目が合わないように下を向いて歩いていた。
とにかく人に会わないこと、会ったら自分の就職活動のことを話さなくちゃいけなくなる(と思い込んでいた)から、人と出会わないことばっかりを考えていた。卑屈になってしまっていた。そんな心境だから全てが上手くいかなくなるのは当たり前だ。
つらくて、つらくてしょうがなかった。就活でことごとく結果が出ない時、社会から自分の積み上げてきた全人生を否定されたような気分になる。
「お前は社会から必要とされていない人間である」
それを毎日、毎時間突き付けられているような感覚に陥っていった。
自分が今まで良いと思ってやってきたことが「それ、全部間違ってる」って言われた気分になってしまうのだ。
ちょうどその頃、同世代の就活生が連続で数十社企業に落ちたことに絶望し、首をつって亡くなったというニュースを見た。私もかなり追いつめられており、
「就活全滅 自殺」「就活全滅 社会不適合者」「就活失敗 人生終わり」
などのキーワードでネットを徘徊しているような時期だったから、とても他人事とは思えなかった。
「次にニュースで報道されるのは自分かもしれない」
と思ったことを覚えている。
自分が生きていいのだろうか、これから何十年も働かなくてはいけないのに、その入り口にすら立てない人間が生きていいはずがない、と思うようになっていた。
さらに悪いことは続く。
ある日、尋常じゃない痛みが俺の奥歯を襲った。どうしようもなくなって病院に駆け込んだら、歯の詰め物が神経に届いてしまったらしく、そこだけ銀歯にしなくちゃいけなくなった。
普通の精神状態なら何ともないことでも、精神的に追いつめられていると身の回りで起こった全ての事象に理由をつけて自分を責める材料にしてしまう。
就活もダメ、歯もダメ、そのうえ彼女もいない。
世界がありとあらゆる方法で自分を攻撃してくるような錯覚に陥ってしまった。
何回自殺しようと思ったからわからない。だけどそんな勇気もなく人生を心底恨んだ。
「地獄を歩いている気分」「世界がゆがむ」などなど、つらい気持ちを表現する言葉は沢山あるが、その程度じゃなかった。
歩いていて、めまいを起こしたように平衡感覚が保てなくなったり、最後には辛すぎて記憶までなくなった。昨日していたことが思い出せない、一週間前のこと、一ヶ月前の記憶が空白状態になる。こんな体験は初めてだったので
「いよいよ、俺もヤバいな」
と思ったことを覚えている。
そして最終面接へ
1年以上、就職活動を続けてきて唯一、最終面接まで残った企業だった。
言いたいことは全て伝えた。できることも全部やった。
しかし、結果は・・・・
不合格。
「これで、人生は完全に終わったな。」
そのころはもう、翌年の就活が本格化する時期だった就職留年という道もあったが、内定を取れる気が全くしなかった。一回も内定をもらったことがない自分が一つ下の就活生と一緒になって結果を出すことなんてできるはずがない。
「就活失敗したら人生終わり」
その言葉が頭の中をこだましていた。
廃人のように生気がなくなり、顔からは表情が消えてしまっていた。
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