心友 【其の二・見えない縁】

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三人とも同じ公立中学へ進学した。その当時中学受験はマイノリティな世界。少なくともおらが地元においては公立中学へ進学するのがごく当たり前の話だった。

ここでクロイワとトクシマは同じクラスになる。さらには二人揃って同じ部活に入部した。


陸上部


トクシマは小学校時代に「馬」というあだ名がつくぐらい足が速かった。のちに手も早くなったとかならないとか。一方のクロイワはリトルリーグにいたのでそのまま野球部に進むのかと思いきや、中学のうちに足腰をしっかり鍛えるという目的もあり陸上部へと入部した。

自分は二人とクラスも異なり、部活も異なった。なにせ走ることが人生で一番嫌いなのだから陸上部は選択肢にすら入らない。

球技は嫌いではないが集団競技は正直好きではない。ミスをして敗戦した時にチームの責任を一人で負うことだけはとことん避けたいという性格が如実に出ている。その結果と言っていいのかわからないがなぜか軟式テニス部に入った。今はソフトテニス部と呼ぶのだろうか。

三人それぞれに繋がりができたことで親睦は深まった。学年を経ていくごとにクラス替えの影響もあって、ここにもう一人二人の仲間が加わることになる。部活のない時にはなんやかんやとよくつるんでいたものだ。高校受験前には皆で大晦日に天神様へ合格祈願に行ったりもした。もっとも合格祈願はオマケのようなもので堂々と夜遊びできることが楽しかっただけなのだが。

高校受験は皆合格。ただし進学先はバラバラだ。ヒロユキとトクシマは同じ学区だが別々の高校。クロイワは本来の目的であった野球の強い高校へ進んだ。特徴的な略称が全国的に知られているあの高校だった。


さすがに学校が異なると顔を合わせる機会は必然的に少なくなる。中学には中学の、高校には高校の「コミュニティ」というものがどうしても生まれてくる。三人それぞれが、自分が今いる場所でコミュニティを形成するのは必然的なこと。教室や部活という長い時間を共有する仲間が最優先になる。

普通ならば「会えない時間が愛育てるのさ」の歌詞のようにいくわけもなく、自然消滅的にバラバラな人生を歩んでいくのが当たり前なのかもしれない。だが、なぜかこの三人は見えない縁で繋がれていたらしい。

いつだったか、クロイワの家に三人が集い奴の着用していたユニフォームに袖を通したりした。特徴的なイニシャルが大きく刻まれたユニフォーム。なかなかできない貴重な体験にトクシマも自分も興奮し、ちゃっかり写真撮影までしたのは二人にとって…いや三人にとってよき思い出になっている。

高校生活は長いようで短い。本当にあっという間の三年間だ。最上級生ともなれば社会へ出るのか進学するのか悩む時期。しかし、その前にクロイワには大きなイベントがあった。

春の「センバツ」である。



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