【第3話】出会いは突然に
会社を辞めて新潟についた俺はペンションオーナーである片桐さんと出会った。そして車でペンションまで送ってもらえることになったのだが...
車は稲がびっしりと生えた田んぼが広がり、緑豊かな道を進む。
道の向こうには透き通った川が見える。本当に綺麗な場所だ。
「ヘぇ~。前田君はプログラマーだったんだね。僕にはそんな難しいのはできないよ。」
片桐さんが呟いた。俺は謙遜した素振りを見せる。
話を聞いて見ると片桐さんの方がもっと凄い人だ。元プロのスキーヤーで、海外でバックパッカーをした経験があるらしい。
俺はペンションでの仕事場のことが気になって、片桐さんにどんな人がいるか聞いてみた。
俺は自分の耳を疑い、頭が真っ白になった。俺の記憶の高校生活は空白になっている。
高校で暗黒時代を過ごした俺は3年間の記憶がなぜかない。
車にはねられたりとかはしていなのだが、韓流ドラマばりの記憶喪失で記憶がない。都合の悪いことはすべて忘れたのだ。
女子高生なんて未知なる未確認生物UMAと同等だと思っていたので、俺の人生にかかわることなどもうないと思っていた。
しかしここにきて、まさかJKなるものと関わることになるとは。つくずく人生とは本当にわからない。
歳は相当違うだろうし、話になるのだろうか。
きっと人生最大の難関が自分に訪れるだろうと息をのんだ。
色々と不安を心に感じながら車に揺られていると、やがて車はペンションについた。
周りを山に囲まれた一角に、洒落た白い西洋風の建物がそびえたつ。
ここが今日から夏のひと時を過ごすペンション『シオン』だった。
シオンに入ってみると眩しいシャンデリア、掃除がいきわたった清潔感あふれるソファー、どこか温かみ感じられるフロント...。
思わずため息が漏れる。ここだ。写真で見た異世界で間違いない。
2階に続く大階段があったのでフらりとあがってみた。有名な絵画が壁に飾られている。
登り切った2階には先がどこまでも続く広い廊下がある。
番号が振り分けられた部屋が規則的に並び、窓からは外の美しい景色が見えた。
外の風景に見惚れていると、後ろから喋り声が聞こえて、階段から誰かが登ってきた。
振り返ると、そこには色白で黒髪が美しい長身の女性がいた。
その人はまるで...花にたとえるとユリの花のような綺麗な女性だった。
一瞬その人がこちらに気がつき、目が合った。彼女の目の色は少しヘイゼル色が混ざっていた。
だが、目を背けられ友達らしき人と奥の方に歩いていってしまった。
すれ違いさまに、いい匂いがした。
胸の鼓動が早まりドキドキしている。この動悸はなんだろう。
それにあの人は一体だれだろう?でもどこか懐かしい感じがする。
一度も会ったことがないのに...。
不安と期待が入り交じり、きっと何かが始まろうとしている。
そんな予感を感じていた。
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