フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第2話

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バイト代は月末にならないと入らない。

ていうかバイト先までの交通費すらない。

学校は徒歩で行けるから大丈夫。

でも、月末までどうやって過ごせばいいんだろう。

家には小銭程度しかないし、冷蔵庫の中はほぼ空っぽだ。

カップ麺の一つもない。

ない頭を振り絞って考え続けた。


明日学校で友達に借りようか。

数人のクラスメートの顔が思い浮かぶ。

でもみんな1人暮らしでお金に余裕がなさそうだ。

1人だけ例外もいるが…

由美の顔が浮かび上がる。

高飛車な薄笑いをした由美の顔が。

慌てて取り消す。嫌だ、もう施し なんて受けたくない!

お金に困っているだなんて知られたらそれこそ笑い者にするだろう。

由美じゃなくとも誰かから噂が漏れてしまうに決まってる。

そうなると誰にも助けて何て言えない。

絶望でくらくらした。

さっきまで呑気に今晩何を食べようか考えていたのが

夢のようだ。


その時ふと足元を見ると小さな雑誌が落ちている。

状態が綺麗だったので拾い上げてペラペラめくってみた。

すぐに私の視線が止まった。


《時給4500円保証❗️日払いOK❗️入店祝い金1万円❗️体験入店随時募集❗️》


私の時給のちょうど5倍だ…。しかし日払いOKてホントなの?

この駅の裏にある繁華街ら辺にあるらしい。

私は迷いなく雑誌を手に立ち上がった。


この手の店がどんなものかは想像がつく。

この時給を見れば一目瞭然。

酒をつぎ、お世辞を言うだけじゃ済まされないだろう。

もちろん触られたり…するんだろうな

私は顔を強張らせながら  それでも足を止めなかった。

躊躇するとか冷静にとかいう頭がどこかへ飛んでいた。


店は裏通りにあった。

ラーメン屋の脇の細い路地の奥

歩いていても気がつかないような場所だった。

でも黒服の男が男性客を送り出しているのを見てすぐわかった。

客は赤ら顔でスケベったらしい顔だった。

黒服の男は、道脇で迷子のようにモジモジしている私にすぐ気がつき声をかけてきた。

私が面接に来たことを言うと

ものすごく愛想の良い顔になって店の中へと通してくれた。


店内はかすかなBGMが流れ、カビとタバコと香水の匂いが充満していた。

寒いくらいクーラーの効いた狭い部屋の古びたソファに座らされた。

しばらく待つと  太った小柄のおじさんが入ってきた。

おじさんは   わざわざどうもね  と言って自分を店長だと名乗った。

そして舐め回すように私を眺めながら


「いや、飛び込みでこんな可愛い子が来てくれるなんて嬉しいね〜」

と言った。

そして こういうアルバイトを今までしたことがあるか聞いてきた。

私が首を振ると


「そう〜  でもね 、すぐに慣れるから何も心配いらないよ」


とネチっこい笑みを浮かべた。銀歯がいやらしく光っている。


その他いろんな質問を受けた後、私は小部屋から出され更衣室に連れて行かれた。

制服に着替えたらまた出てこいと言われた。

おぼつかない手でロッカーを開け、服を着替える。

更衣室に入る前、ちらっとラウンジを横目で見たが

所狭しと背もたれが異様に高いソファが並んでいた。

客と女の子が2人で何やら怪しげに談笑している声が聞こえた。

でもその姿は背もたれに隠れて見えなかった。


白い衣装はピッチピチだった。

サザエさんに出てくるワカメと同じくらいパンツ丸見えミニスカだった。

でも私は、こんなもんだ  想定内だ  と呪文のように言い聞かせていた。

今夜だけだ   ここで我慢すれば1万円もらえるんだ。


その時、若い女性が入ってきた。

黒髪ショートヘアで何て特徴もない平凡な顔立ちの子だった。

え!?こんな普通の子がいるの?

私は信じられなかった。

こういう場所は 赤毛や金髪のギャルと決まっているのに。

ショートの子が背中を向けている私に声をかけてきた。

「今日初めてなんだってね。店長が言ってた」


「はい」


「緊張してるでしょ。大丈夫だよ。みんなそうだから。でも慣れちゃえば全然平気になるよ」


私が顔を強張らせたまま引きつった笑顔で頷くと

ドアが開き、また2人の女の子たちが入ってきた。

彼女たちも拍子抜けするほど普通の若い娘だった。

ほぼすっぴん顏で、ジーパンにTシャツ姿。

彼女たちも私が初めてと知ると

「慣れちゃえば何てことないよ〜」と笑った。


ドアの向こうでノックとともに

「新人さん、そろそろいいですかあ〜」

という声がした。

私が出て行こうとする時、3人のうち1人が

「終わったら消毒忘れないでね」

と言っていたのが気になったが

私は構わず、軽薄そうな瘦せぎすの黒服の後に続いた。

黒服の男はラウンジの片隅で小声で言った。


「んじゃ、まあ  ひと通りわかってるとは思うけど、とにかく君のすることは

   お客様を喜ばすことね。失礼のないように」


「はい…」


「ま、キミ可愛いから頑張りしだいでそこそこは稼げるよ」


「あのう…」


「喜ばすって口で喜ばせばいいんでしょうか」


「んー…ま、そういうことも含めね!ぶっちゃけ気持ちよくさせりゃいいんだよね」


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