母がアルコール依存症と気づいてから10日間地獄を見た話。3日目。
母、帰る
昨日の出来事と母がどこに行ったかわからない状況にとても落ち込んでいた。
今日も行方が分からなかった場合、警察に相談しようと考えていた。
朝バイトに行く前、父に電話する。
母は帰ってない。
暗い気持ちでバイトに向かう。
午前中だけの勤務だった。
帰り際に父に再度電話。
母がいた。実家に帰っていた。
しばらくの間バイトを他の人に変わってもらうように手配し、
昨日の失態を取り戻すかのように私は実家に飛んで帰った。
父には
とにかく目を離さないでほしい
とだけ念を押した。
切符代ギリギリ足りた。
持ち金全部使ってとにかく実家へ急いだ。
ああ、お母さんがいる…
実家で母の姿を見て、思わず
どこ行ってたんだっ
と怒鳴りたかったのを飲み込んだ。
昨日からどんだけ心配したか、でもこんな状態の母を一人で帰したのは私だ。
自分の責任も感じていたため何も言えなかった。
とにかく、帰ってきてくれて良かった。
ほっとしたのを覚えている。
のんきな顔して言う母。
私は正直な返答は出来なかった。
心配で帰ってきた。という一言が言えなかった。
言うと、母に母がおかしいと直接言うのと同じのように思えたからだ。
まだアルコール依存症だと決まったわけじゃない。
医者に言われたわけじゃないし。
私が昨日、本見て勝手に推測しただけだ。
確定に限りなく近い推測なのだが。
運転する
家にいる。家でいいじゃん。
行こうよ。
外食が好きな母は何かにこじつけて食べに行こうという習性があった。
母は私が帰ってきた、というのを理由に外に出たがった。
しばらくこの会話が繰り返され、しつこさに負けた私と父は外食することに応じた。
実家は田舎なので外食するためには隣町に行かないとお店がない。
移動は必然的に車となってしまう。
車を運転すると言ってきかない。
今日はお酒を飲んでないのを確認し、そんなに運転したいんならやったら?
と運転させた。
軽自動車に三人乗り込み、五分程経った頃から異変が始まった。
車内にはラジオが流れていた。
ラジオのチューニングはあっていた。
なのにラジオのチャンネルをひたすらずらそうと母が手をかける。
よそ見運転になるので車はフラフラ蛇行。
何度もラジオを触る手をどけさせ運転に集中するように注意した。
私たちがずっとラジオに手をかけるのをブロックしていると、
今度はエアコンの送風口をしきりに触り始めまたも蛇行運転。
危ないから途中から父に運転を代わってもらった。
助手席に座った母はまだエアコンの送風口を繰り返し触っていた。
どうしたの?と尋ねると
ハエがずっといるからさっきから払ってる
と言った。
え?ハエいたっけ?
いやハエなんていなかったよな…
?と思っているとビアレストランに到着した。
嘔気、嘔吐
母はビアレストランで父に大好きなビールを飲ませてあげたい、と思ったのだそう。
もちろんそういう場所のお食事といえばビールに合う油っこいものが多い。
レストランに入った瞬間ソースや肉の油などの混ざった匂いがした。
私は母と一緒にレストランに入った。
並んで歩いていた母が急に視界からいなくなった。
振り返ると母が胸を押さえて苦しそうな表情をしている。
その瞬間、母が急に嘔吐した。
量はそんなに多くはなかったが、黄色い液体をレストランの玄関の床に吐き出した。
ただ事ではないと思い、急いでトイレに連れて行った。
トイレに行くと、吐くものがなくなったのか、何も出なくなった。
今、吐きましたよね?
大丈夫じゃないだろ。
もう帰ろう、と言っても私たちが何も食べてないのが気になるらしい。
行こうとしつこかったので本当にもう大丈夫なのかな?
とは思ったがとりあえず店内には入った。
母が突然吐いたことと吐物の処理とで私は食欲がなかった。
気が進まなかったがしぶしぶメニューを選んでいると、母がまた苦悶の表情となった。
気分が悪そうだった。
ほら、やっぱり。
我々は何も注文せず店をあとにした。
幻覚
著者の森田 望美さんに人生相談を申込む
- 1
- 2
著者の森田 望美さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます