フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第4話

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この仕事悪くねえって思えるからよ」


私は黙って頷いた。

そうか、この男の言うこと間違ってないかも。

歳とったってトキメキとか欲しいものなのかもしれない。

ボランティア精神でやるなら私にもできるかもしれない。


その時、急に暗転した。

私はドキッとした。


なに?!   なにが始まるの?!

まさか…

昨夜の悪夢のような光景が脳裏に浮かんでくる。

玲子さんの声がした。

「大丈夫よ。見て、始まるから」


???私は目を凝らしたが何も見えなかった。


が、その次の瞬間爆音に近いBGMが流れてきた。

これは…

松田聖子のアイドル時代の名曲だった。

何でこんな古い曲が…?

でも、可憐で可愛らしいリズムと歌声だった。

そして幕が上がった。


照明の下で淡いピンク色の衣装をまとった女の子たちが踊りだした。

体を反らせたりフワフワと揺れたり歌声のイメージ通りの可憐な舞だった。

照明が赤く染まり洋楽が流れ今度は白と黒の衣装の女の子たちが登場する。

妖艶にクネクネ腰を振ったり、上半身を倒し床にうつ伏せになったり、

同性の私の目から見てもセクシーでキレイだった。

離れた席に腰掛けてみている中年のオジさんは口を半開きにして釘付けになっている。

その後も、女の子のキレのあるダンスや本格的な歌唱力の歌などが続き20分のショーは終わった。


私はショーが終わってもしばらくさっきのオジさんのようにボーッとしていた。


「今のが9時からの第一幕。それから11時に第二幕もある。うちはショーパブなの。ショーに出れば顔が売れて人気者になれる。ここで働くならあなたにもでてもらうことになるから」

玲子は私の顔を覗き込んんで微笑んでいた。

「どう?やれそう?」


私はタクシー代をもらって家に帰った。

玄関で靴を脱ぎながらまだ夢を見ているようだった。


帰りの電車代すらなかった私なのに

玲子が無理やり手に持たせてきたのだ。

家を出る時はタクシーで帰宅するなんて想像もしてなかったことだ。


ベッドに腰を下ろし

今日起きた出来事を反芻していた。

と言っても、ほとんどが、ついさっき観たショーについてだった。


美しい

と思った…


こんな気持ちは生まれて初めてだった。


長い長い人生の中で若く美しい時期はごく短いということ

それは若さの真っ只中にいる19歳の私にも何となくは分かっていた。

その限りある美しさを物語っているかのような儚げで、それでいて女性の美しさを余すところなく魅せるステージだった。


もしかすると今夜あそこに座って観ていた人間の中で

私より強く魅了された者はいないかもしれない。

玲子さんはそれを読んでいたのかもしれない。

タクシー代と一緒に8万円の封筒を渡してきた。

私は戸惑いながらも、それを受けとった。


「必ず返します」


「あなたがここで働けば、そのくらいすぐ返せる。明日、待ってるからね」





私は封筒に中にある万札の厚みを感じながら

もう引き返せない

と思った。



そう、その思いは的中する。


それでも私はまだ、知らなかった。

私の待ち受ける未来が今、想像する以上に非日常であり、過酷であることに。



私は平凡で普通の人生を歩いてきたつもりだった。

そしてこれからも、そのつもりだった。

大学を出たら、就職して、職場結婚して、子供を2人くらい持って

平凡だけど幸せな人生を生きよう。

本当は無理をしていたのかもしれなかった。

普通であることは、当たり前なようで、そうじゃなかった。疲れることも多かった。

皆と同じに、はみ出さず、目立たず…

いつも心でそう願ってきたつもりだった。


私は窓から見える月を見上げた。


ーーー私はどこへ向かっていくんだろうーーー

その時

私のまだ純粋だったであろう瞳に綺麗な三日月が映っていた。


























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