北欧料理を食べた感想 (エストニアどうでしょう⑰ )
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外国に来たら誰しも気になるのは、その土地の食べ物である。
ここエストニアにも、エストニア人がはるばる来た外国人観光客にオススメする名物料理がある。
その筆頭がブラッド・ソーセージ(血のソーセージ)だ。
今回はエストニアの料理を食べた正直な感想を書いていきたい。
ちなみに僕は日本に居た時は好き嫌いは殆どしない方だったので、「平均的な日本人の味覚」を持っていると思っている。好き嫌いに関係なく、公平な判断が下せると思う。すなわち日本の方がエストニアに来た時にも有用なエストニアの食レポがお届け出来ると思う。
ちなみにフィンランドではフィンランド料理を食べていないが、おそらくエストニアとほぼ同じようなものであると推察される。Twitterでフィンランド留学中の日本人学生がエストニアに旅行に来て「食事がおいしい・・・」と涙を流していたのを目撃したことがあるので、殆ど変わらないかヘタするとフィンランドよりもエストニアの方がおいしいということになる。なので北欧の食事のおいしさの基準値として今回はエストニアの料理をご覧頂きたい。
それでは始めよう
ブラッドソーセージ(血のソーセージ)
エストニアはこのブラッドソーセージをやたらと推している。どこを見ても「これが俺らの名物だ、いいから一度食ってみろ」と言わんばかりの推しようである。
そこまでしつこくアピールするからには美味しいのであろう。
僕は早速、タリン旧市街にある有名なレストランでブラッドソーセージを食べてみた。
「いただきまーす!」
結論から言おう。
エストニア人のイチオシ、ブラッドソーセージは、「あまりおいしくはない。」
食感 ボソボソしている。ソーセージの中には肉の代わりに大麦が詰まっている。
味 ほぼ味がしない。塩味はあるがとても薄い。付け合せのジャムをつけて食べるのが定番だそうだが、今度はジャムは酸っぱすぎる。ただでさえ塩味の薄いジャムをソーセージにこの付けるメリットが良くわからない。もちろんこのジャムをつけるとソーセージは酸っぱくなる。
付け合せ 上に乗っている厚切りベーコンは美味しかった。エストニアは燻製の国でもある。ベーコンはイケる。写真でソーセージの右に見えるのは千切りキャベツの酢漬け(hapukapsas)である。エストニアではこのキャベツがあらゆるところで出てくる。砂糖などは入っておらず、酢100%で味付けしたシロモノだ。とても酸っぱい。でもマヨネーズと合わせると味がマイルドになって食べられないことはない。
総評「ボソボソしている」だけの味の殆どしない食べ物。ジャムをつけると「ボソボソしている上に酸っぱい食べ物」になる。ブラッドソーセージはエストニアが貧しかった時の食べ物なので、ソーセージに肉の代わりに大麦を詰めているのだが、故にボソボソしたよくわからないものになっている。なぜそんな貧しかった時代の食べ物を観光客に推すのか?しかも現代になってはエストニアでも普通の肉のソーセージの方が圧倒的に安い。レストランで食べるブラッドソーセージは安くはない。無理して食べる必要は無い。
点数 55点/100点
いきなり低得点を叩きだしてしまった。しかしエストニア人はこのブラッドソーセージを観光客に対して、国を代表する料理として「推したかった」だけであって、「おいしいと思って欲しかった」訳ではないのでは無いだろうか?「地元にあったからとりあえず推した」という類のものなのだと思う。日本でも郷土料理で「これはちょっと・・・」という物が少なからずある。これはそういう類のものなのだと思って割り切ることにした。
ポークステーキ
ラクヴェレ(Rakvere)という街に行った。大相撲の把瑠都関の故郷でもある。エストニアのスーパーのお肉のパッケージにもよくこの街の名前が書いてあるのでおそらく畜産で有名な街なのだと思う。
今回はそこにあるレストランで、メニューの一番上に乗っている「ポークステーキ」を食べることにした。
メインディッシュのポークステーキ
付け合せのパンとバター
結論から言おう 「うん・・・まあまあ・・・」
味 見た目は美味しそうなポークステーキ。しかしやはり味がしない。塩味が薄すぎる。そのくせ胃にはしっかりもたれてくる・・・・
付け合せ 付け合わせのパンとバター(写真右上のかご) バターにめちゃくちゃコクがあっておいしい!こんなバター食べたことない!
総評 付け合せのバターはめちゃくちゃおいしい。でも肝心のポークステーキの味が薄すぎる・・・
評価 60点/100点
ブラッドソーセージよりはちょっと上がった。でもそれも付け合せのバターによるところが大きい。
僕はエストニアを代表すると思われるこれら2つの料理を立て続けに食べた結果、強く思った。
「もうこの国のオススメの食べ物に期待するのやめます・・・」
こうしてある種の絶望をたたえた結果、僕は無事「スーパーで既成品購入派・自炊派」となっていったのであった。
ちなみにタリン市内にあるイタリア料理店・アイルランド料理店・日本料理店にも行ったが、どのお店もとても美味しかった。ということは僕がエストニア料理のレストランで立て続けに残念な気持ちになったのは、エストニアの人たちの味覚の問題ではなくて、エストニア料理自体の問題であると思う。
旧市街にあるアイリッシュバー「Dubliner」のフィッシュアンドチップス。かなりうまい
同じくDublinerのマッシュポテトのグラタン。かなりうまい。
タリンのアメリカ大使館の近くにあった寿司店 めちゃくちゃうまい。佇まいから態度から味から、間違いなくこの店のエストニア人のシェフは日本で修行している。
ようは外食する店とメニューをちゃんと選べばそれなりに旨いのだ。
まあエストニア料理のレストランでも定番以外のものはおいしいのかもしれないけど、最初の2つでそれ以降新しいものに挑戦する気力を失ってしまった・・・
でも家庭料理はとてもおいしい。
ブラッドソーセージなど、エストニアが国を挙げてオススメする料理がちょっと僕の口に合わなかったのだが、カウチサーフィンで現地の方の家に泊めていただいた時に出てきた料理はどれもとてもおいしかった。国としてのアイデンティティを打ち出そうとした時に出せる料理が塩味の薄いああいうものしか無かっただけで、エストニアの人々が日常生活で食べている料理の方は普通においしいのかもしれない。
そんな現地の家庭でいただいた料理を御紹介したい。
豚のスープ
タリンのAirbnbホストのイーヴォに頂いた「豚のスープ」
前述の「千切りキャベツの酢漬け(hapukapsas)」を使ったであろうスープ。なるほど、酢漬けのキャベツもこうやってちゃんと調理すればとても美味しく食べられるんだ。酢漬けにしたのは保存が効くようにしたんだろうけど、それをちゃんとおいしく調理するレシピがあったんだ。右上は塩ゆでした豚の脂身と黒パン。これもおいしいかった。
人様からごちそうしてもらっておいてそれを偉そうに点数で評価して公開するというのも憚られるが、やはりここは誰にでも客観的事実が伝わりやすいやすいように数字でお伝えしたい。
豚のスープ
評価:90点!
これはなかなかの高得点だ。おいしい。エストニアの家庭料理はいけるかも。
チョコレートケーキ
カウチサーフィンにてハープサルという観光都市にてごちそうになったのが、娘さんが作ってくれたチョコレートケーキだ。
エストニアのチョコレートケーキはかなり旨い。
結論から言おう。この家の娘さんが作ってくれたケーキは「物凄くおいしかった」のだ。
甘さも甘すぎずちょうど良い。チョコも濃厚だけどしつこくない。クリームも良い感じ。
ちょっと家の手作りケーキで想定されるおいしさのレベルを遥かに超えている。
お世辞抜きに本当に売り物になるレベルだ。
評価 10000点!!
エストニアはビールや乳製品に加えてチョコも有名だ。だからなのか、このケーキはとにかく美味しかった。プロじゃない人が作る料理のレベルをはるかに超えている。限りなくプロに近い。タリン市内のカフェで食べたチョコケーキよりもおいしかった。いやむしろ人生で食べた手作りケーキでダントツに美味しかった。
このケーキを作った娘さんは19歳の学生さんで、学校も料理とは関係の無い学校に通っている。「料理の専門的な教育を受けていない人が作ったケーキで、このレベルの手作りケーキが出てくるエストニアって凄い!」とエストニアに来て初めて食べ物で感動することになったのだった。
ブロッコリーのオムレツ
日本のアニメを見ようとタリンに住むエストニア人の友人に誘われた時も、伯母さんがつくってくれたというブロッコリーのオムレツを頂いた。このオムレツもとてもおいしかったのだ。ちなみに観たアニメ映画は押井守監督の「人狼 JIN-ROH」だった。
評価:95点
スーパーのお惣菜
エストニアのスーパーには必ず惣菜コーナーがある。エストニアの惣菜は中々おいしい。
中でも僕の一押しはお店でじっくり焼かれた「ローストチキン」だ。
値段も安いので毎日のように僕はエストニアでローストチキンを食べていた。
柔らかくてほどよく油も乗ってておいしい!
評価:80点
こうやっていくつか料理を挙げてみると
「なんだエストニアにも中々おいしいものがあるじゃないか」
と感じられると思う。
実際その通りなのだ。
だけどなぜかエストニアの観光客向けの料理はブラッドソーセージなど、食べてすぐにおいしさが伝わりにくいようなものが多い。
でも翻って日本の郷土料理を思い出して見てもそういう類のものは多いと思う。
有名だから一応食べてはみるけど味は微妙・・・そういうことがある。
これはひとえにその食事が「おいしい」ということよりも「独自性を強調したい」ということの方が優先されるために起こる事態であると言える。
もっとも「おいしい」ものはあるにはあるが、パンチが効いていなかったり、他地域と内容がカブっていたりするので、「より尖ったもの感」を出すためにその料理を名物料理として押し出していく、そういう経緯があるのだと思う。
という訳で、エストニアで外食する時にも選べば美味しい料理もある & 家庭料理はおいしい という話でした。
次回は北欧滞在中に僕の目の前で実際に起こった「食文化の摩擦」と、ネットに転がっていた下の画像との関連について書きたい。
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