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16/9/2

世界47か国女子バックパッカーができるまで(3)

Image by Olia Gozha

大人の世界・・

20歳の誕生日を迎えた私は、その居酒屋に通うようになっていた。

ママは私の母と同じ52歳。なんだか自分の母親のように思えてならなかったし、自分の実の母親から感じるような過剰な干渉がないのが心地よかった。そこには他人であるべきある程度の一線や愛情があり、それは私をホッとさせるものだった。


居酒屋には本当にたくさんの地元のお客さんが来た。

小さな居酒屋だったけれどもそこにもあるべき人間関係があって、そのうちにだんだんとわかってくる。例えば誰々がいつもこの時間に飲みに来るのは長年連れ添った奥さんに逃げられたからだとか、ここで出会った誰々と誰々が付き合っているのだとか。


昼間は普通の大学生と一緒に過ごし、授業をさぼってカラオケに行ったりたわいもない話をし、夜は居酒屋に言って年配の方々の話を聞いた。もちろん、お酒をたまにご馳走になったりして。

当時の私は少し背伸びしたい感覚だったのだと思う。だってお酒なんてほとんど飲めなかったのに、そんなおじさま達の話を聞くのが楽しくて仕方なかったのだ。


おじさまA「最近よく来るねえ~!学校は行ってるのか??勉強してるのかい?!」

ケイシー「ええ、もちろん、学生ですから!でも学校の授業で聞く話よりもここでみなさんの人生経験を聞いている方がはるかに楽しいんですもん」

彼らのほとんどは、『事実は小説よりも奇なり』とでもいうような豊かな人生経験をしていた。

不倫の話、ひとの裏切りの話、過去の栄光の話。今まで親の庇護のもとぬくぬく育ってきた田舎育ちの自分、人間社会の表の顔しか知らなかった私にとってはそんな人間のありありとした裏の顔を知ることは何よりも興味深かったし、自分の歩んできた変化もなにもない毎日に比べて生の実感をまざまざと感じさせられるものだった。

こじゃれた居酒屋に行くわけでもないのに、そこに行くときには童顔の自分をなめられたくなくて必要以上に化粧をして、不慣れな大人っぽいワンピースを着る。そんな姿はきっと彼らにとっては滑稽にうつっていたに違いない。それでも温かく、優しく迎えてくれたママや常連のお客さんのいるような、アットホームで優しい居酒屋だった。


ただひとつ、誤算だったことがある。


それは私が、そんな大人の世界に入り続けていたい背伸びした学生でありたかっただけで、実際にその世界に足を踏み入れたいとは思ってもいなかった点だった。


話に聞く人間の裏の顔はどれもどろどろとしていて、自分にとっては遠い世界のものに思えた。

『なんでも経験してみよう』

高校3年の春にこう決意した自分の思いが、まさか現実になるなんて思ってもいなかったのだ。

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Image by Jukka Aalho

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