フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第12話
友達の由美もその1人だ。
うちだけでなく名門大学が幾つも名を連ねるマンモスサークルだ。
表立ってではないが噂によればサークルのOBには成功者が多いため
一流企業への就職にも強いと言われていた。
でも実際活動といえば何てことはない。
スポーツやアウトドアなど楽しむ以外は飲み会ばかりのお遊びサークルだ。
拓哉ともここで知り合った。
先日行われたバーベキューもそうだ。
それまで必死でそういうブランドのようなものにしがみついてきた私だったが
今はもう人生を軌道修正する気は失せていた。
パテオという場所の自分の居場所を見つけ
拓哉と別れる以上
このサークルにも行く必要性ががなくなった気がした。
サークルの男の先輩は顎髭を撫でながら
「あれえ?篠田さんやめちゃうのかい?何でまた」
と言って私を見た。
その目は好奇で満ちていた。
サークルでも、クラスでも私のことが密かに噂されていた。
拓哉とのことだけではなく
私自身についても、急に感じが変わったとか
愛想が悪くなった
見た目が派手になったとか。
もちろん目の前にいる幹部と言われている先輩の耳にも入っているだろう。
「そっか、ほいじゃまあ、そういうことら仕方ないね」
そう言うと彼はどこか蔑むような哀れむよう目で私を見た。
瞬間的に自分が侮蔑の対象という
烙印を押されたような気分になった。
それはクラスでも同じだった。
由美は最近すっかり私を合コンに誘わなくなった。
それに関しては好都合だったが
仲良しグループだった女子たちも私のことを避けるようになっていた。
影でどんな会話が繰り広げられているのか分からないが
とにかく彼女らにとって私はもう仲間にしたくない存在なのだろう。
この前、教室に傘を忘れ取りに行った時だった。
由美のすぐ横に置いてあったそれを
汚いものをつまむようにして
自分から遠ざけているのを他の友達らが
「汚いものみたいにー」
とふざけて笑いながらなすりつけあっていた。
教室の入り口に佇んでいる私に気がついた彼女らは
何もなかったような顔で別の話を始めた。
傘を手に取り教室から出るまで
屈辱で私の顔は青ざめていた。
視界の隅に見えた由美の顔は
やっぱり口元に侮蔑の笑みを含ませていた。
気持ちが落ち着くまで、結構な時間を費やした。
今も思い出すと息が苦しくなる。
私は本来強くない
まだまだ心がひ弱なのだ
私は顔をあげた。
ちょうどナンバーワンのミサキが席を立ち玲子の前へと進み出ていた。
今日は遠目から見ても高そうなベージュピンクのドレスを見に纏っていた。
表情はふてぶてしいものだが身のこなしは可憐で美しい。
私の何倍もの分厚い封筒を無表情で受け取ると
またこちらの向かって歩いて来る。
一瞬だけ目が合った。
眠そうな薄目だが強い光が宿っていた。
それは目は
何も恐れるものなどないと言っていた。
私はまだ彼女の足元にも及ばない。
もっと心を鍛えなきゃと思う。
動じない岩のような心を。
私は帰宅すると
1本3万円のワインを開けて
1人で乾杯した。
もちろん味なんて分からなかった。
所詮、安アパートに住む20歳になったばかりの小娘であることは変わらない。
でも、今の私の気分に合った、それらしいことをしてみたくなったのだ。
その月の給料は既にその辺のOLの倍近くあった。
「乾杯」
私はひとり
グラスを傾けた。
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