フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第14話

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マジ、シャレになんねえよ。アイツ、犯罪者みたいなもんだろ」


大野は靴を履くともう一度私を見て言った。



「あんたも関わらない方がいい。これ言うか迷ってんだけど

前に一緒に働いてたやつがさ、ついこの前ミホらしき女見たって。

場所聞いて、ちょっと驚いた」


その場所は、ここから2駅ほど離れた


有名な風俗街だった。


大野は、まあ悪く思うなよと言い残すと


ドアを開けそそくさと夜の闇に姿を消した。





1人残されたミホの部屋を


私は見渡した。


ベッドの上の布団が乱れ、靴下がひきだしから何足も飛び出している。


ミホが着ていたジャージの隣で私がよく借りてきていた

ジャージが仲良くハンガーにかけられている。


あれ?

あのクマのヌイグルミは?


私はもう一度見渡した。


よく私とふざけ合って投げていたヌイグルミ。


彼女が幼い頃から大切にしてきたものだ。


ヌイグルミを愛おしそうに抱きしめるミホと


アキナに食ってかかっていた鬼の能面のような顔のミホ


2つが私の視界に重なった。


あの表情


嫉妬にかられ狂った鬼のような顔


その鬼が今日、店に忍び込み


アキナへの恐ろしい復讐を実行した。





私の頬をふいに一筋の涙がつたう。


「サヨナラ、ミホ」


私は幾すじもの涙で頬を濡らしながら呟いた。



私はそのまま、玄関の外へ出た。


真冬の深夜に漂う冷気は肌を刺すように冷たかった。


寒さに震えながら思った。


もうここへ来ることはないだろう。


そして闇の中を私は


1人歩いた。


終電もとっくに終わった平日の繁華街は


人もまばらだった。


私は1人ぼっちになった寂しさと不安の中にいた。


夜の世界の華やかさの裏に隠された

女たちも醜さと恐ろしさを目の当たりにしたせいだ。


そしてこれから待ち受ける


避けて通れない恐るべき何かが


私の不安を煽っているのだった。

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