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13/5/4

すべてのコーヒーにストーリーがある ③ ~シングルオリジン~

Image by Olia Gozha

コーヒーのイメージ

 コーヒーの原産地、というと浮かんでくるのが、ブラジル、コロンビア、キリマンジャロ、モカ、ブルーマウンテンあたりが一般的によく知られているだろうか。

「ブラジルのコーヒーは苦い」

「モカやキリマンは酸味がある」

「ブルーマウンテンは香り高く、おいしい。そして高い」

 こんな先入観を持っていないだろうか。

 話しは変わるが同じような話で、お米の生産国と言えばどこがあるか。日本はもちろんアメリカ、タイ、中国あたりだろうか。

「日本のコメはおいしい」

「タイ米はにおいがよくない」

「日本のコメの中でもやっぱり魚沼産のコシヒカリが一番」

「いやいや秋田のあきたこまちだ」

「だったら宮城のひとめぼれも」

とまあ出てくるのがこんな話。

 大事なのは下の3つ。日本産だからおいしいというわけではなく、とりわけこの地域のこの品種がおいしい、というのが、われわれ日本人にはあると思う。

 ならば「ブラジルのコーヒーは苦い」と一括りにしてしまうのはどうか。そもそもキリマンジャロやモカは国ではない。ブルーマウンテンってどこにあるのか。

 キリマンジャロはタンザニアを中心にまたがる山脈の名前で、モカはイエメンにある港の名前だ。キリマンジャロはほとんどがタンザニアの豆を使っているからまだいいものの、モカに関してはイエメンとエチオピアの豆をそこから出荷するので一口にモカと言っても「イエメンモカ」と「エチオピアモカ」がある。

 ひと昔前のコーヒーはそこまで掘り下げることもなかった。外来語だから踏み込めなかっただけかもしれない。

シングルオリジンとは何か

 そこで出てくるのが「シングルオリジン」という言葉だ。

 主な生産国であるブラジルやコロンビア、グァテマラなど中南米の国は広い。アフリカのタンザニアやケニア、エチオピアなども高い山がそびえる地域がいくつもある。その山、その地域、その農園にしかない特性があって然るべきなのに、そこに注目されるまでには長い時間がかかった。

 また米でたとえるなら、海外に輸出する際、1000トンのコメが必要だとする。それぞれの品種だけでは1000トンに足りないから、コシヒカリを500トン、あきたこまちが300トン、ひとめぼれが200トンを混ぜて1000トンにして輸出しちゃおう。

「そんなことしたらせっかくのコシヒカリの粘りが際立たないじゃないか」とある日本人が言う。

 しかしこれがひと昔前の(多くの喫茶店で出ているのはこの手のものだが)コーヒーの輸出の仕方である。

 ブラジルならミナスジェライスやカルモデミナス、コロンビアならカウカやウイラ、グァテマラならアンティグアやウエウエテナンゴ。さらにその中にもそれぞれの農園がある。村がある。生産組合がある。

 彼らは自分の作るコーヒー豆に誇りを持っている。「わたしが作るコーヒー豆が一番おいしい」と。しかしいかんせん彼らの多くは貧しい。

 貧しい農家は生産量も少ないので、どうしても一山いくらで買い集められてしまうことになることが多い。だから「ブラジルのコーヒーは苦い」のような大雑把なイメージになってしまうのだ。

フレーバープロファイル

 シングルオリジンならどうか。

 ブラジルのカルモデミナスにあるとある農園のコーヒーを飲んでみる。

 鼻先をくすぐるアロマはまるで花を思わせ、一口、口に含むとキャラメルのような甘味が口全体に広がり、その奥からオレンジのようなフレーバーを感じることができる。アフターテイストは甘く、心地よい余韻が長く続く。

 と、このように言葉で表現することができる。これをフレーバープロファイルと呼んでいる。

 キレがある、コクがある、深い味わい、という抽象的な表現は極力避ける。

 こうして、農園ごとの味の評価をすることによって、小さな農家でもおいしいコーヒーを作っていれば正当な評価を受けて、日の目を見ることができるのである。

 同じ農園でも精製方法や、豆の品種、そしてもちろん焙煎の仕方で、フレーバープロファイルは全く別のものになる。

 それを語るには時間が足りないのでまた別の機会に語ることにしよう。


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