占いを実行して、占いの意味を知る 【そして、多くの人へ】
私と高校時代の友人とでは接し方も違っていた。私にはけっこうスパルタにやってきたが、高校時代の友人には好々爺だった。それもそれぞれの持つ個性を読み解いてのことだったと思う。本人を動かさなくては、どうにもならないからだ。ドラえもんはそれを狡猾に使いこなした。私には、好々爺バージョンでは、だめだったのだ。
占い、とはとても広い学問だった。それらを網羅するにはとてつもなく時間がかかる。
その知識をピンポイントで教えてもらうのに、3万円は安いくらいだった。
自分で学んで導き出すとすれば、もっと時間もお金もかかってくる。
私は悔し涙を飲んだ。彼女に差し伸べる手を持たない、自分の浅はかな知識を悔いた。
そしてやってきた。
ニコニコと正面切って、その人は元町のメインストリートにお店を構えた。
9つの星ごとに、その月にその人が食べれば運勢が上がる食材を使って、デザートも意味を込めて用意している。メニューは毎月変わる。ものすごい事だった。私も自分と夫の星を見て開運料理を作ったことがあった。食材の意味からレシピから調達からと、毎日なんてとてもやってられない、と感じるほど大変なことだった。それを9パターン。このすごさを理解できる人が、世の中にどれくらいいるだろうか。まず多くの人は、食べたいものを食べてしまう。
「占いのイメージを変えたくって。あなた、死ぬわよ、とかそういうものじゃないんです、占いって。自分がどうなりたいかを後押ししてくれるものなんですよ。当たってあたりまえなんです。その先を示せなくては。私、見える・見えない、とかは信じていないんです。」
店長は清々しい店内で、ニコニコと説明した。プチ鑑定もやりますよ、手相視ましょうか、15分1000円で受け賜ります、と言って私の手相をみてくれた。元町の隣には中華街があり、そこにもものすごい数の手相屋がいる。友人が来た時に遊び半分で一緒にみてもらったりしたが、どれも似たり寄ったりで、こうすると変わるよ、と提案をしてくれるものではなかった。娯楽に近いものだった。
しかし、私が店長に感じたものは、
ドラえもんの生まれ変わりか? だった。
こ、この人、本物だ。すごい勉強してきてる。網羅、してきてる。
手相もちゃんと視ることができている。
1000円でこのクオリティは、破格だ。
この値段で視てもらえる日は、そう長くは続かない。すぐに跳ね上がる。
もうこの人、普通に話をしてもらえないくらい、すごい人になっちゃう。
大変だ、大変な人がやってきた、と勝手にあわあわした。
店長は相変わらずニコニコしている。
占いって、怖いものでも怪しいものでもないんですよ、とニコニコしている。
あぁ、でも、これを理解できる人はすごく少ない。真摯な占い師と、尊大さ甚だしい占い師との違いを見分けることができる人は、少ない。ヤブ医者を見分けることが難しいのと似ている。そしてこのランチの意味を理解できる人は、ものすごく少ない。
社会の占いに対する認識は、まだこの店長に追いついていない。
震える思いで店長の開業理念を聞いていた。
どうか、どうか潰れないでほしい。
困っている人の後押しを、どうか、やってあげてほしい。
私は鎌倉店でひとりぽつんとお店に居た時のことを思い出した。
予約の電話も鳴らず、予約も入っていない。予約表は真っ白。
話をするスタッフもなく、とても静かだった。
タイ古式マッサージ、というと風俗をイメージする人も居る。
実際、予約の電話が鳴った、と喜んで出ると、
そちらは本番ありですか?
と聞かれたこともあった。
虫の鳴く声だけが、外から聞こえてくる。
地球上に、もう生きている人はいないんじゃないか、と思うくらいだった。
私1人を残して、みんないなくなってしまったんじゃないかと思うくらいだった。
心が折れる寸前だったと思う。
そんな思いをこの店長にしてほしくない、と思った。
私がこのお店を訪れたのも、うちに来たお客さんからの話が始まりだった。
ねぇ、表の通りに占いのお店ができたよ、知ってる?
なんか、怪しいの。
師匠の写真とか貼ってあって。
行ってみた?
私は苦笑いを浮かべて、じゃぁ見てくるよ、胡散臭いかどうか、と答えた。
占い、というだけで世間の風当たりは強くなる。需要があることは確かでも、占いに行く、というのは人に隠れてこっそりと行くものだった。風俗がそうであるように。
風俗産業だって、もしなければ、もっと沢山の性犯罪が起きていると思う。
それでも裏舞台だった。
ドラえもんに渡されたマニュアルにも
『指定期間が来るまでは人に言わず、行動もしない』
と何度も書かれていた。
なぜ、人に言ってはいけないんですか?と聞くと、ドラえもんは眼鏡をキランとさせて、
必ず、邪魔が入るからです。良い時期に動かなければ、必ず、足を引っ張られるのです、
と言っていた。
『例えば百獣の王ライオンの前をサソリが通り過ぎても、よほど空腹でもない限り、ライオンは黙ってみています。多くの場合、人間は違います。なんだか変!気持ち悪そう!と感じた瞬間、そのサソリを叩き潰すかもしくは逃げ出します。中には遠ざかっていくサソリをわざわざ追いかけて行って殺してしまう人も多いのです。
人という生き物は異質にかんじるものに敵意を持ちます。
人の感情は異質なものへ敵意を感じてしまうのです。』
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