フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第21話

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翌日私は学校を休まなかった。

本音はゼミどころか学校にさえ顔を出したくなかった。

一生ひきこもりたいくらいだった。


でもそれで、いいのだろうか。

被害者である私が泣き寝入りするだなんて



アパートの前で再びかかったエンジン音の中で

佐々木が言った。


「おまえ、明日絶対学校でろよ。辛いだろうけど

   明日行かないと、おまえに後悔するかもしれないぞ」


その言葉を夜中、ずっと反芻していた。


私がこのまま大学に行かなかったら?


あれだけ最低な行いをしてきた苗代は

それこそ高笑いして喜ぶだろう。


そんなの許さない。




さすがの苗代も私が教室に入ってきた時

ギョッとした表情になった。

まさか今日、学校に顔を出せるとは思ってもいなかったのだろう。


苗代は顔に眼帯をして無数の痣をこしらえていた。


佐々木にやられたんだろう。


苗代はいつもと打って変わり落ち着かない様子だ。


それは言うまでもなく

私が自分の悪事の全ての証拠を握っているからだ。


本当は見ることすら、汚らわしい顔を睨みつけた後


私は少しだけ薄笑いをした。


「先生どうしたんですか、

  そんなゾンビでも出てきたような顔しちゃって

  私、どこに座ればいいですか?」


他の学生たちが面白がって笑っている。

苗代は慌てて立ち上がり


「あ、そっ、そうだったね!!空いてるところは…っ

   じゃあ、そこの窓際の席に」


「窓の近くは日焼けするから遠慮させてもらえませんか?!」


私らしくないきつめの口調は、クラスメートたちの、おや?という

視線を集めるのには十分だった。


苗代は顔に冷や汗をかいている。

「じゃ、じゃあ…、そうだな、えーと」


高野聖子が目を丸くさせて苗代と私を交互に見た後

私のことをキッと睨んできた。


この女、まだこの最低オヤジに淡い想いとか寄せてんの?

教えてやろうか?

この男の正体。


「先生、私首痛めてるんですよね。

   昨夜、夜道で変質者に襲われて」


クラスメートたちがざわざわし出した。

え〜!?という驚きの顔や、男子学生は途端に好奇の目になった。


ひどい!警察には届けたの⁉︎

偽善たっぷりに立ち上がったのは

ついさっき私を睨んでいた高野聖子だ。


「まだ、これからどうしようか迷ってるとこ。

    先生、私をこんな首なのでこの席と変わってもらえませんか?」


私は苗代の真正面を陣取っている聖子の席を指した。


聖子の顔が一気に曇った。

「え、私、朝イチでとった席なんですけど」


この発言でさっきの偽善者ぶりが

クラス中の知るところになった。


聖子の席以外も選択はいくらでもできたが

あえて、私は聖子の席を指定した。


そして挑むような目で苗代の答えを待った。


苗代は、さっきよりも冷や汗をかき

小刻みに震えてさえいた。

苗代は高野聖子を見て言った。


「た、高野、代わってあげなさい」


「でも、センセ、私だって…」


「つべこべ言わずに代わりなさいって!」


苗代の剣幕に今度はクラス中が苗代の方を見てざわざわやり出した。


誰かが「先生、なんか顔色悪いですよ」と言った。


「す、すまないが、先生は、たっ体調がすぐれないので

   今日は自習ってことにしてもらう…っ」


苗代はやっとの思いでそう言うと

逃げるように教室を出て言った。


高野聖子は唖然としたまま止まっている。


これで少しは分かったでしょ、  あの男のこと。

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