心友 【其の十・新潟】

前編: 心友 【其の九・目】
後編: 心友 【其の十一・昔の記憶】

クロイワが脳の病に侵されたことを知ったが奴は住まいである秋田の地にはいなかった。新潟の病院に入院していた。


想像でしかないが秋田には奴の病に関する手術のできる病院がなく、紹介で新潟の病院に移ったのであろう。そうでなければ縁もゆかりもない新潟という土地にいるはずがない。


そこで行われた手術。


結果から言えば失敗に終わっていたのだ。


だが、失敗というのがどういうことか、今どんな状態にあるのか、そこまで細かな状況は聞いていなかった。入院していて術後の経過があまりよくない、その程度に理解していた。


虫の知らせがあったのかどうかはわからないが、思い切って新潟へ向かうことにした。旅と呼べるかどうかは不確かだが一人旅みたいなものだ。


新潟という土地は、幼い頃に知り合いの知り合い的な繋がりでお邪魔したことがあった。人生最初で最後のスキーをした…正確にはスキー板を履いた場所でもある。


その後新潟に地に赴いたのは佐渡ヶ島で行われたウォーキングイベントに友人とともに参加した時だっただろうか。


ただ、どちらのケースにせよ自分ひとりの意思で新潟を訪れたわけではない。


形の上では自由気ままな新幹線の旅だが、気持ちは晴れやかではなかったはずだ。


病院へどうやって行ったかも、何という病院名だったかも覚えていないが、なぜか道すがら新潟明訓高校を見に行ったことだけはハッキリと記憶している。当時「あぶさん」が愛読書だったからに違いない。


そして、あの日の新潟は眩しいぐらいに空が晴れていた。日本晴れならぬ日本海晴れとでも言うべきか。肝心なことはうろ覚えなのに、本当に変なことだけ覚えているものだ。


そのうろ覚えの病院。病室が大部屋だったか個室だったかさえも…。ただ、大部屋だったとしても窓際のベッドにいたような気がする。


クロイワと久々のご対面だ。


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心友 【其の十一・昔の記憶】

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