フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第24話

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その夜も、忙しくなりそうだった。



メールと電話だけでも




常連客が何人も、顔を出すよと約束してくれている。




でも、客に会うことは私のパテオでの地位を確立、維持するための義務の行いくらいに思っていた。


もちろん新人の時から、変なやましさを表に出さず応援してくれた客は別だ。




でも、それ以外のやたら体を近づけたり、来れば必ずアフターを要求してくる客たちには


正直、少しの情すらもったことがない。




でもそれは私が冷たい人間だからだけではない。




どんな綺麗事言い合ったって


所詮は客とホステスだ。




下心の全くない客なんていないだろうし


お金目当てじゃないホステスなんてどこにもいない




蓋を開ければ、どのホステスも私と似たり寄ったりだ。








それでも当時、私はパテオにくるとワクワクした。


佐々木に会えるから。


一言も言葉を交わせなくたっていい。

私達は必ず、目と目が合った。


その瞬間、会話するのだ。




それで十分だ。



何か別の用事などで佐々木がいない日は


なんとも味気ない夜になった。



早く帰りたい…



それだけを思いながら、客とグラスを合わせていたものだ。






その夜、ショーの衣装に着替えステージに向かって歩いていると


背後から男女の揉めている声がした。


佐々木が慌ただしく、出て行こうとする姿に

カナが執拗に絡んでいる。



思わず私は眉間にシワが寄せた。



ねえ!と甘えた声を出して腕にしがみついている。


私は、生まれて初めて全身がカッと熱くなるのを感じた。




なんだろ…あのオンナ…




私が、今にも駆け出したい気持ちを抑えていると





「杏、早く。舞台上がりなさい」




玲子が冷めた瞳で私を促す。




私は仕方なく舞台に上がって、もう一度2人のいた方を見た。




佐々木が、カナの腕を振り切って出て行くところだった。



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