フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第24話

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BGMの音できこえなかったが


カナは佐々木に向かって何か罵倒していた。




幕が上がっても


私は全然ショーに集中できなかった。






ショー終わりに舞台袖にいる玲子が




先ほど以上に冷めた目で私を見つめていた。




そのまま通り過ぎようとすると囁くような小声で、口早に言った。




「誰かさんに、うつつを抜かすのもいいけど

   ショーには集中して。あれじゃお客さんに失礼よ」




私は、玲子を振り返った。




「うつつを抜かすって、なんの話ですか?」




「ま、いいけど。

   とにかく、知ってた?

   あなたは今うちの店で上から数えて3番目に人気のホステスだって。

   それ、忘れないでちょうだい」




私はなにも言わず、玲子に背を向けた。




玲子が薄々、私と佐々木の関係に気づいているのは分かっていた。




玲子の態度が私に対して、どんどん素っ気なくなっているのが分かるから。




うつつを抜かすだなんて…


嫌味ったらしいセリフ言っちゃって




玲子は、やっぱり嫉妬しているのだ。




この私に…?




そう考えると




不思議と優越感と焦りの混じった思いになった。






私はショーの衣装を着替え、常連客の元へ行った。


客も、ショータイムの私は少し変だったと言った。


私は、めんどくさいなと思いながら


だって(常連客の名前)さんが観てるんだもん!

緊張しちゃって振り忘れちゃったあ!などと言ってごまかした。



すぐ向かいにカナの横顔があった。


金髪ガングロのチャラそうな客に、もたれかかりタバコを吸っている。




私は、自分に言い聞かせた。


きっとさっきのはなんでもないこと。


カナが佐々木に長期休暇でも要求して断られたんだろう。



今夜も佐々木に、誘われている。


あと数時間すれば


あの声が、すぐ耳元でずっと聞ける。


そう考えるだけで、幸福感に包まれた。



特定の人物のことを思うだけで

ここまで気持ちが高ぶるってことを


私は生まれて初めて知った。






でも、そんな幸福な戸惑いも


その夜で終わりだってことを



私は後に知ることとなった。



そして、その先にはまだ私の思いもよらなかった

更なる、どん底があるってことも




人は誰でも、狂うことができるということも。



今思えば、私が本当におかしくなったのは

この辺りからだった。








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