友達が自殺未遂しました、たかが婚活で 〜前編〜

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次話: 友達が自殺未遂しました、たかが婚活で。 〜中編〜

私も早く結婚して温かい家庭を作ろう。

優しい旦那さんと可愛い子供達に囲まれて

毎日過ごせたら、どんなに幸せだろう…


私は三人兄弟で楽しかったから

3人くらい子供が欲しいな。

お母さんみたいに苦労はしたくない。

私たちだって父親がいないのは、どこかいつも寂しかった。

私は絶対離婚しない。

そしてお父さんみたいな人とは結婚しない!

心から信頼して支え合える夫婦になるんだ!


奈々子はそう心に決めていた。


奈々子の父は、大企業に勤めてはいたが

仕事人間で、家庭を一切顧みなかった。

母親は外に仕事を持っていたので

夫と別れてもなんとか子供と暮らせると

奈々子が9歳の時に離婚した。妹はまだ1歳にもなっていなかった。


母は別れてせいせいしたと言うが

離婚の代償は大きかった。


母は朝から晩まで仕事漬けで

行事や参観日に来てくれないこともあった。


奈々子はそんな母に代わって兄弟の面倒を見た。

妹のおしめを変え、弟の遊び相手にもなってやった。


経済的にも余裕がなかったので欲しい物を買ってなどと口にできなかった。

奈々子は子供心に母親を困らせないように

気を遣い我慢することを覚えた。


でも奈々子なりに母に感謝している。

母は身を粉にして働き奈々子を短大まで出してくれた。

弟にいたっては大学まで出ることができた。

そこにおいては母親を尊敬している。


母親も内心、奈々子に申し訳ない気持ちがあったため

奈々子が早く結婚して安定した暮らしをしてくれることを望んでいた。


ただ、奈々子はあまりに異性と話すことが得意ではなかった。

慣れていないと言ったほうがいいかもしれない。


短大を出て就職した先にも中年から初老の男性社員しかいなかった。


昔の友達の中に結婚相手となるような

親しい男友達は1人もいない。


同僚に誘われて合コンやお見合いパーティに参加するが

来るのはいつも、ただ騒ぎたいだけの男や

可愛い子しか目に入らないような男ばかりだった。


奈々子のように控えめで地味なタイプの女性は

メイクばっちりのモデル体型の垢抜けた女子と

同席しても霞んでしまうのであった。


32歳の誕生日を目前に控えた奈々子は意を決して

とある結婚相談所に入会する。


テレビも取材するようなカリスマ女性社長の相談所で

ホームページでも画面いっぱいに、ベルサイユ宮殿にいる貴族のご婦人のような

格好をした女性社長の笑顔のアップ画像が映し出され、その隣に大きな文字で

確実に結果を出せるわ!

という相談所の謳い文句がある。


ここなら私だって見つかる。

いや、私のように結婚に真剣な人間は

同じように真剣な男性と出会うにはこういう所を利用すべきなのだ。



相談所に初めて電話をかける時は声が震えた。


奈々子はどうにか週末に入会面談を予約したのだった。





豪華に装飾されたサロンに通されると


そこへ、ド派手なピンクのスーツに花柄のスカーフをつけた社長が現れた。

近くで見るとサイトの写真にはなかった細かい皺が顔中に刻まれていた。

でも、笑った顔は人を惹きつけ、安心させる華やかな魔力があった。


「あ〜ら〜〜、可愛いお嬢さんですこと!」



女社長はとびきり愛想のいい顔で笑った。


「おいくつ?」


「さ、32になります、来月。あ、年齢大丈夫ですか?」



奈々子がビクビクしながら言うと、女性社長は手に口を当てて

オーッホホホホ!!!と笑った。

奈々子はキョトンとして見ていた。



「大丈夫よ!ちょうどいいくらい!ま、若いとは言えないけど

   今が初めどきね!今を逃すと次はないわ!」


彼女は、始終口元に微笑をたたえながら

婚活をする大切さを語った。


女性も自分の未来を自分の手で切り開ける時代です。

指をくわえて欲しいものはを待ってても永久にこない。

自分の想い描く未来を自分の目で見つけ掴み取るのよ!


息継ぎはいつしてるんだ?酸欠にならないか?


と突っ込みたくなる程

彼女の熱弁は果てしなく続いた。

彼女の言葉は魔法のように奈々子の心をガッチリ強く掴んで話さなかった。



最後の締めの言葉はこうだ。


「今ならまだ間に合う!うちで一緒に頑張りましょう!」

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